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    清(せい)

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    清(せい)

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    先生のお腹にタルがボディステッチする話です。
    初手で語り手が切り替わります。うっかりしてました。すまん。

    #タル鍾
    gongzhong

    しるし「ひっ、ぐ、う…」

    チク

    針を刺して、肉を抉らないように。
    けれど、浅すぎて皮膚がちぎれないように、糸を通す。


    金色に光る目からは水が溢れた。
    けれど、それを拭う気力はもうないらしい。
    ゆっくりと伝っていって、ポタリと落ちた。



    ふぅふぅ と浅い呼吸を繰り返して指を噛む。
    針を刺す度に身体をピクリと揺らすのが可愛くて、愛おしい。
    完成してしまうのが寂しいような気さえする。













    「もうすぐだよ。」




    そう言って笑う顔のあどけなさと、瞳の奥に宿る欲のどす黒さがミスマッチで、こんな怪物を生んだのは誰だと、顔もわからない「誰か」を恨みそうになる。




    「ぅ、ぐっ… 」


    「ははっ 喋れないか。痛い?」



    痛いに決まっているだろう。
    何故そんなに楽しそうに笑えるんだ。

    激しい痛みではなく、微妙な痛みが続くのが苦痛でならない。意識を飛ばせるほどの痛みの方が楽だったのに。

    時計の針は、短い方が一周するくらいしか動いていない。けれど、はやく終われ、終われ、と願う時間はとても長く感じた。




    できた、そう言って顔を上げた彼が
    青い刺繍糸で飾り付けられた脇腹を指先でなぞる。


    起き上がって下腹部を見やると、
    己の脇腹には、この明るい髪の青年が戦闘中に敵につけるものと同じ紋様が咲いていた。

    にこにこと、嬉しそうに笑うこの男の行動の意味は。



    「これなら消えないね。」


    そう言った彼の頬に一発お見舞いして、
    乾いた音が室内に鳴り響く。






    「…………いたいよ、せんせ。」

    自信に満ち溢れた表の顔と打って変わって、
    今目の前にいる彼の、叩かれて俯いたままつむじを見せる、その弱々しさと言ったら。

    彼の裏の顔は、年相応…よりも幼く、ひどく不安定なものだ。



    どうしてそんなに……信頼がないのか。



    「痛いのは俺の方だ、馬鹿。」


    「酷いよ。」


    「酷いのはお前だ。」



    グイッ と無理やり顔を上げさせて頬を抓る。


    「いひゃい、」


    「どうせ、こんな印をつけて己の所有欲を満たすつもりだったんだろう。」


    「…………。」


    「そんな事をしても無意味だと、何故分からないんだ。」



    頬を抓る指に雫がつたる。
    泣きたいのは俺なのに、好き勝手しているくせに、
    お前が泣くな、馬鹿。



    「こんなことをしなくても、俺はもう既に
    身体も心も、お前に全てを明け渡しているだろう。
    それなのに…」


    いつまで経っても彼に伝わらない。
    いつになったら、俺を見てくれるんだ。




    彼とそういう関係になって数か月。
    嫉妬なんてものは可愛いものだった。

    堂主と話している時ですら鋭い眼光を飛ばすものだから、あの堂主に気を使わせてしまったし、気をつけた方がいいよと忠告までされてしまった。


    彼のなかで渦巻く感情がどんなものかは俺の知るところではないが、
    俺の中にも、身体を明け渡してもいいと思えるほどの情があることを彼は理解出来ていないらしい。
    伝え方に他に方法があるのならば今すぐ教えて欲しいくらいだ。




    「せんせ、そんな顔しないで、」



    両頬を手のひらで包まれて、
    ようやく目が合う。



    「ごめんね。」


    呟いた彼の、
    抓りすぎて赤くなった頬を撫でる。


    「明日はこの頬を部下達に笑われてしまえ。」


    「ははっ、うん。」


    情けなく笑う彼の額に口付けた。

    腕を引っ張って ボフッ と音を立てながら
    二人揃ってシーツに埋もれる。






    翌朝、いつの間にか出ていったらしい彼が残していった温もりを撫でてから、起き上がる。


    窓の外を見やると、既に街は忙しなく動き始めていた。
    太陽が照りつける石畳が空気を揺らしている。
    外は今日も暑くなりそうだ。




    夜の間に冷やされた床板が、足の裏から体を冷やして気持ちがいい。
    ペタペタと踏みながら身支度をする。



    シャツを羽織って、ボタンを止める前に姿見の前に立つ。
    映る所有印は、ふむ。
    彼の独占欲の大きさなのだろうか。

    誰に見られるわけでもないし、そのままにしておこう。


    「ふふっ」


    自分以外誰もいない空間で静かに笑った。
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