縁食う刀 糧を分けることで縁を繋ぐ儀礼は、古き時代より伝わるもののひとつである。満足に腹を満たせぬ頃、それは慈悲であり度量の証であった。
神であるならばなお、そういった心持ちは強いだろうと思ったところで、ふとお節介な審神者はそれを口にしてしまったのだ。
与えるということは慈悲で、縁を深くしたいという隠喩でもあるのではないのかと。特に厨に行きがちな刀の二振りにそう問えば、彼らは顔を見合わせた。
もともと”物神”のような彼らにとって、食事とは知るに遠い娯楽だったはずだ。供儀として血肉を捧げられるような神ならまだしも、刀の付喪神である彼らにとっては縁遠いものようだと。
ずけずけと神の真意に踏み込まんとする人の子に比べれば、その滑稽さはマシなようでもあったが。
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