魔獣の花嫁 #7「面影と眼差し(後編)」 クロノから魔獣の事を聞き出すのは一度邪魔されて終わった。物音を聞きつけて他の冒険者がやってきたからだ。いくら奴が気に食わないと言っても側から見れば俺とクロノは同じ依頼を受けた冒険者同士。死体が転がる場所で同業者を斬ったとなれば更に面倒な事になる。苛立つ気持ちはあったものの、屋敷の警備依頼は続行中なのだから焦らなくてもクロノは逃げたりしない。
それに俺自身、少し冷静になるべきだと思ったのだ。
どうにもあの男を前にするとどこかで冷静さを欠く。キスにしろ擦り傷にしろ落ち着いて対処すれば防げたものだ。それにその後のクロノとのやりとりでもそうだ。徐に自分の右手を見る。弾かれて痺れはしたが、大した外傷にすらなっていなかった。
8223