秘密の話 この世の中には秘密だからいいものというのが、確かにある。
例えば、誰と誰がどういう関係だとか。
そういうものは秘密だから、余計に何かを搔き立てたりするのだ。
「…………うわ」
思わず、声を漏らしたのは見てしまったからだ。
家庭教師であるところの鍾離と、自分の妹の蛍がキスをしていたのである。
確かにすぐに部屋へ戻ってこないとは伝えたものの、だからといってまさか、そんな関係だったとは思いもよらなかった。それに――声を漏らしたことで、どう考えても鍾離には気づかれてしまった気がする。
とはいえ、なかったことにするしかないだろう。
二人の接触が終わってから、少し経って空は部屋の中に入った。部屋の中ではなんとも言えない空気が漂っている。
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