未定その1
「んで?金が払えないっていうのはどういうこと」
「えっと…その…」
応接室のソファーで肩を震わせながら言葉を濁す男を見下ろす。βの身でありながら運命の相手を探して街中でフリーハグをしていたところを補導された。そのまま告訴されて被疑者となって~ってとりあえずこの裁判は俺が勝った。それでいい。問題は、この目の前にいる松野カラ松被告が勝訴したというのにも関わらず弁護士費用を1円も払えないとぬかしやがる、そのことだ。一応、働く気はあったのかハロワには通っているようだし、まぁそれはいいとしてそもそもいい大人が貯金1円もねぇってのはどう考えても人生なめてんだろ。そんなんだからβなのに運命だのなんだのぬかすんだ。イラついてるのを見せつけるように舌打ちして大きくため息を吐く。それだけでジワリと目に涙を浮かべるのだから格好だってただの見せかけなんだろう。クールだなんだと騒ぐ髑髏の付いたらいだーすじゃけっとも、ダメージって言っていいのかって言いたくなるようなダメージジーンズも異様に胸元の空いた白いシャツもお気に入りらしいサングラスも何もかも。痛々しいっていうかなんて言うか、ワイルドでクールな男はこうだ、という意志の元選んでいるらしいが着ている本人の気質が弱すぎる。俺がちょっと不機嫌なさまを見せただけで半泣きになって、何がワイルドなんだか。
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