空閑汐♂デイリー800字チャレンジ:14 日曜の昼下がり、広々とした寮の談話室に現れたのは篠原が呼び出した人物ではなかった。
「や、おはよ」
「もうおはようの時間じゃないだろ。空閑」
ジャージ姿で自身の端末を弄っていた篠原は、空閑の声に視線を向けながら溜息をひとつ。そこに立っていたのは十数時間前には恥も外聞もなく泣き喚いていたなんて忘れましたという顔をしてニコニコと笑みを浮かべる男である。
「俺は汐見を呼んだ筈なんだけどな」
昨夜の釣り銭を渡す為に呼び出した相手が空閑に変わった理由に見当が付かない程鈍くはないが、面倒臭い男二人に巻き込まれた篠原としてはそれでも文句の一つくらいは言いたくなるものだ。
「昨日アマネが出した分は俺が返したし、そうなると釣り銭の所有者は俺になるんだから間違いじゃないよ」
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