陽だまりの目「類、今、少しいいか?」
「司くん?別に大丈夫だけど、なんの用だい?」
突然教室の引き戸が開かれたと思ったら、天馬くんが教室に入ってきた。多分天馬くんがB組の教室に顔を出した時点で、うちのクラスの全員、「天馬くんが神代くんに話をしに来た」と、常識レベルでそんな共通認識を持っていると思う。それくらい、見慣れていた。だから、今の天馬くんが少しおかしいことくらいお見通しだった。私が分かるくらいなのだから、より親密な仲である神代くんが、見抜けないはずもなく。
「なんだか元気ないけど、どうしたの?」
天馬司という男は、冗談抜きで本当に騒がしい男だ。
違うクラスの教室に用事があったとして、同じ学年だとしても見慣れない光景のなか、私だったら普段より気後れしてしまう。でも、天馬くんは違っていた。初めて天馬くんがB組の教室を訪ねたとき、私は入口から一番遠いすみっこの席に座っていた。だというのに。
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