傷のある子は「どう? ちゃんとごはんとか食べてる?」
「とかってなに? 大丈夫、ちゃんと食べてるよママ」
自身の部屋の中でスマホを耳に当てながら、コハクはそう返す。
彼女がこうして気兼ねなく話せる相手は少ない。普通よりも、きっと少ない。しかしだからこそ、この時間が幸せである事を彼女自身理解している。作り笑いではなく、無意識に口の端が上がっているのが自分でもわかっていた。
「だってほら、コハク昔から料理苦手だし……」
「ほんと大丈夫だって。心配しすぎだよ」
「じゃあ、たとえば最近何を作ったの?」
「た、たとえば?」
「そう、たとえば」
沈黙が流れる。何故なら真っ先に浮かんだのがゲルと化したうどんだったからだ。しかしここで『ゲルうどん!』とは答えられない。ちゃんとしたもの食べてる? という問いに対してのゲルうどんは絶対にちゃんとしていない。
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