相応しいのは自分だけ「よし、可愛く出来た……かな?」
大きな鏡の前で一人の少女がくるくる回る。普段着ることのない白いワンピース。ほんのり赤く色づいた唇。普段よりも瞳が大きく見えるようにまつげはしっかりあげている。普段することのないお洒落に苦戦しながらもなんとか満足出来る仕上がりに口角は自然と上がっていた。
「よし、頑張って……デート行くぞー!」
孫悟飯、ピチピチの十七歳。本日人生初のデートの日である。
「よし、いないな……今のうち!」
家の扉を僅かに開いて外の様子を恐る恐ると探っている。悟飯は外にとある人物がいないかを確認していたのだ。その人物とは勉強を疎かにしてはいけないと注意してくる母親でも一緒に組手しようと誘ってくる父親でも、遊んでと飛びついてくる可愛い弟でもない。
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