寄せては返し。どこまでも深く、どこまでも黒い。どこかの夜の海。
潮の満ち引き、寄せては返し。そんな言葉が脳裏によぎっていく。
黒はかつての絶望のような。それともトラウマのような。それか一種の虚無の様な。うっかりしてると底なしの闇に引き摺り込まれそうな、だだっ広い暗闇。
任務後だった。ボクらは大した傷もなく生還したけど、寒空の下、疲れた身体に、休憩したいとベンチに腰掛けたのはボクが先だった。
それから、ベンチ裏の暗闇...波の動きを、ボクらはただ黙って、眺めている。缶コーヒーをたまに啜って、また眺めてを繰り返していた。ゆったりと、波の音だけが聞こえて、心地よい。
「...なあ、狛枝」
突如。沈黙を破ったのは日向クンだった。
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