ヤング・クロウリー ~始まりの物語~ 第二部⑬話「無垢ゆえに……」 グリムヒルデが女王となってから数年が過ぎた。
その歳月は、ディアヴァルにとって幸福なものだった。女王はディアヴァルを「愛しい子」と呼んで可愛がり、どこへゆくにも連れて歩くようになった。彼女の美貌と調薬の腕前の噂は遠い国々にまで広まり、その彼女がカラスを連れ歩くと聞いた人々は「使い魔に違いあるまい」と噂して畏怖の念を深めるのだった。
もともとカラスは賢い生き物として知られており、民話にもその賢さを伝える物語が多くある。その一方でカラスは死体を漁る不吉で不浄な生き物とも見られており、何かと小賢しい悪戯をすることもあって厭われることも多かった。
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