館山の異母兄弟<第一章>
先月、会ったことのない父親が事故死した。別荘から戻る途中の峠道で、運転していた車はガードレールを突き破り大破したという。その情報の出所は、一通の内容証明郵便だった。
年始の繁忙期の代休で、その日はたまたま休みを取っていた。雪がちらつく寒い日で、どこへも出かける気になれずに、部屋で母親が大切にしていた画集を眺めていると、インターフォンが鳴った。
「こんにちはー、郵便局でーす。尾形百之助さんに内容証明郵便のお届けです」
人生で初めて受け取る内容証明郵便だった。名前くらいは聞いた事があった、訴訟とか揉め事があった時に使われるとか。何か変な事件にでも巻き込まれたのかと思ったが、差出人は弁護士と異母弟を名乗る“花沢勇作”とあった。
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