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    yknown5

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    ダイエットしてるのにお菓子作ってしまったので、反省として書いた傭泥ss(反省してるとは言ってない)

    ドロップスコーン綺麗な円形にくり貫かれたそれを網に載せ一息つく。あとはクロテッドクリームとラズベリーのジャムをココットに入れてバスケットにスコーンと一緒に入れたら完成だ。今は二時半、あと二十分程でマーサ辺りが女性だけで行われる茶会の為にセットを引き取りに来るだろう。頼まれた仕事はこれで終わりだ。仕事と言ってもただの慈善活動なのだが。
    粉のついたボウルを洗う前に、と常温へ戻しておいたバターをそこへ入れた。使ったまま置いていたヘラで軽く混ぜ、砂糖、卵、小麦粉、牛乳、チョコレートチャンクとウォールナッツを順に入れその都度混ぜていく。あっという間に完成した生地は二人…三人ほどが食べれる程度の少量。これは自分が食べるためだけに作るものなのだからいいのだ、と気が乗っているせいか変な優越感を持ちながらへらとスプーンで鉄板へと丸く落とす。形にこだわらなくても焼けばぽい形になるそれに期待しながら、止めていなかったオーブンへと突っ込んだ。

    「ピアソンさん、受け取りに来たわ」
    「あ、あぁ。まっ、待ってろ」
    想定している時間にダイアーとマーサが並んで現れた。ダイアーは茶器を取りに来たのだろう。待っている間にバスケットにあら熱のとれたスコーンを並べておいたので、冷蔵庫からココットを取り出し空いた隙間につめる。ほんのり温かさをもっているが、向こうですぐ並べるだろうからクリームが溶ける心配は要らないだろう。傾けないように気を付けてと一言声をかければありがとうと返された。
    「あら、まだ何か作っているの?」
    匂いに敏感であるダイアーが茶器をトレーに重ねながら問いかける。
    「あ、あぁ、大したものじゃない。た、ただの私のお茶請けだ」
    「あら残念、私達は食べれないのね」
    「君達にはそれがあるだろう」
    呆れたように見れば冗談よっと軽口を返された。
    「ちゃんと間食もしているようで安心したわ。もっと普段の三食の量も増やす必要もあるけど」
    「…ぜ、善処する」
    さっきまで呆れていたのに逆に呆れ返されれば準備が終わったのかマーサに声をかけた。
    「間食してあの体型……」
    「彼を私達と一緒にしてはいけないわマーサ。……お茶を飲みながらボディメイクについて話しましょう」
    それじゃあ、ありがとう。二度めの礼を言って彼女達はキッチンを後にした。


    「さてと、焼けたか」
    見送った後オーブンから鉄板を取り出せば、目論み通り綺麗な茶色へと変化させている。オーブンの電源を切り、熱が入りすぎぬよう網へと移す。一見ソフトクッキーにも見えるそれに感嘆を吐いた。いいお茶請けになるだろう、茶会のついでにと沸かしていた湯を再度温めるためにコンロに手を掛けた所で気配を感じ体が跳ねる。
    「………さ、サベダー、」
    「いい匂い、これ食べていいやつ?」
    死角から顔を覗き込ませてくるのはつまみ食いの常連。義眼側から声をかけることを何度も止めろと言っているが、聞いてくれた覚えはない。異国の人間なので言葉が通じてないのかと思う時もあるが、彼の話す言葉を此方は聞き取れているのでやはり聞く気がないのだと思う。面倒だが聞かせておかないと自分の心臓が縮むだけなので、諦めずいつもの言葉を溢す。
    「ま、毎度言ってるが、そそっちから声掛けるの止めてくれ、」
    「こっち側は俺が守ってるから、安心して欲しいんだ」
    "いつも通り"の返答をされ眉間に皺を寄せた。
    何をとち狂ったのかこの青年は何かと私の左側を心配してくる。戦場で亡くした仲間と被せているのか、としても自分はこうなってから長いのだ。心配される必要など全く無い。そっと腰に回されようとした手を叩き落とし(そこそこ力を込めたが傭兵にとっては痛くも痒くも無いようだ)少し温くなった湯を火に掛ける。
    「そ、それは私のお茶請けだ。た、食べるのならそ、そっちにスコーンがある、から、適当にして食べてくれ」
    「ピアソンさん一人でこんなに食べれるの?」
    「いや…の、残りは、あ、明日の朝食にでも、すする、」
    「朝はちゃんとしたもの食べなきゃ。これは俺に半分食べさせて」
    叩かれた手を気にはしなかったが腕を回すことを諦めた彼は、それでも居座るつもりではいるように食器棚からマグカップを二つ取り出した。読めない目でじっと見詰められたら何も言えず生きた目が泳ぐ。ほんの数秒後諦めた溜め息を隠しもせず吐いた。
    「そ、そこのスコーン、大皿に盛って、食堂に置いとけ。ち、茶は淹れておく」
    「ん。了解」


    「い、言っておくが、大したものじゃ無いぞ」
    「ピアソンさんが作ったものは全部良いものだよ」
    「、そ、そうか、……ひひ、き、君は食いしん坊だから、何でもいいか」
    「ちょっと、俺だって良し悪しくらいあるだけど?」
    紅茶のはいったマグを相手に渡し、自分は持ち込んだ椅子に座る。椅子は一つしかないので勝手に参加を決め込んだ彼にはいつも通り立ち飲みしてもらう。
    淹れたてのため熱いであろうマグには口をつけずお茶請けを一口齧った。表面がサクッとしているが中はシットリと柔らかく、出来立てで温かいためチョコレートチャンクが溶け出している。二口齧ると先ほど当たらなかったウォールナッツがカリッと新たな食感を与えた。見た目は兎も角味の出来は上々。
    「紅茶冷ましてやろうか?」
    「き、君に冷蔵機能があるのか?こ、子供じゃないんだ」
    中々液体に口をつけない様子にからかいの無い声で言われるのを、反対にからかいを声色に乗せる。ふーふーっと息を吹き掛けても勿論表面の温度が少し下がる程度。意を決してマグを少し傾ければ少量の液体が舌に触れ肩が跳ねた。
    「火傷した?大丈夫?」
    「だ、大丈夫だ。気にするな、そ、それより、き、君も食べるがいいさ」
    ぐっと寄せられた顔を掌で押さえて、それ以上距離を縮めないようにする。一度止めるのに失敗して指で触診されたことを思い出し悪寒が走る、首を降り菓子を差し出せば少し納得いかないながらもそれを手に取った。
    「…、!おいしい」
    のっぺりとした顔が年相応…いや、見た目相応に輝く。相変わらず食べることが好きなのがわかる。瞳が輝き表情がころっと変わる様子にふはっと笑いが溢れる。
    「な、なに…」
    「いや、何も??ち、ちゃんと噛んで食べるんだぞ坊や」
    「……子供じゃねぇんだぞ…」
    むっとした表情を浮かべるも口がもぐもぐと動き続ける様子に、今度は腹を抱えて笑った。
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