図書館の大魔道士 パプニカ王宮の図書室には、戦火を逃れた貴重な魔道書や歴史書が多数納められている。宮殿の東端にある。
私が魔法使い見習いとして側仕えさせて頂いているクレア様の執務室は、西の端。部屋の主は出張で明日までお帰りにならないため、私はひたすら普段できない部分の掃除に精を出していた。そこへあの方が現れたのだ。
長い廊下をひたすら歩く。ここに来てもう3ヶ月経つというのに、いまだにこの広さには慣れない。知らないエリアに行くと、迷子になることもしばしばだ。
勇者ダイ様が大魔王を倒し、平和が訪れてから10年。
とは言っても、私は当時4歳だったから、何が起こったのかよく分かっていなかった。ただ、村の大人たちが騒いでいた事は覚えている。母さんは私を抱きしめて泣いていた。父さんも珍しく上機嫌で、お祝いだ、と言って近所の人たちとお酒を飲んで笑っていた。
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