『杞憂』あれから数日が経った頃、麻人の描く絵は不気味でおどろおどろしいものばかり多い。何か悪い夢でも見ているように思えるが寝顔からはそうとは考えられず、寧ろ幸せな夢を見ているように思えた。ただ、私に懐かないのが少し不満だ。絵梨佳に懐いているのを見ていると少しばかり嫉妬心が芽生えてくる。大の大人が子供相手に嫉妬しているのもあれだが現状、幸せなら大丈夫だ。麻人が私を見た途端、強ばった。私から何かを感じ取ったのだろう。
「ほーら、大丈夫だから。凛子は怖くないよ」
絵梨佳がそう言うと麻人はゆっくりと近づいてきて、私に抱きついた。そして、ギュッと抱きしめてきた。私も負けじと劣らず、抱き返す。
「どうせ何にも守れてないくせに」
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