うさぎの日「シュミルはうさぎって言うんですよ」
時々フェルディナンドに夢の世界の言葉を教えてあげることがある。冬を終えて眠るまでの他愛ないピロートークだ。
「"ウサギ"」
「フェルディナンド様はあちらの世界の言葉の発音が上手ですね。ミズデッポウとかも」
フェルディナンドはぶつぶつと反復してうさぎの発音を馴染ませている。
「君は"ウサギ"のようだと、ジルヴェスターが言い出す前から思っていた」
わたしの頬をむにっと摘んで、それからすごく愛おしそうな目でわたしを見つめた。
「うさぎは『可愛い』の象徴ですが、こちらでもそうですよね。あちらでは狼に食べられちゃうって概念あって」
「"オオカミ"?」
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