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    ながつきみく

    @rurihanamiku09 そうだらくがきはこうすればいいか…みたいな感じで…色々気にせず流します…多分(基本、らぐぽ三昧かと)

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    ながつきみく

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    夏の書きかけがあまりに多いから途中だけど…一回置いてみよう
    なんてことない二人の日常
    おちもなにもないけど…ただただ穏やかに
    本になることはないこねただからこの後残すか消すかは不明

    ##キラシャイ

    残暑の一こまキラと最初に出会ったのは、まだ中学生の頃だった。

    つまり、今なら「子供」と呼べる年齢にあったわけだが、当時は自分(達)なりに「大人」のつもりで生きていた。

    ただ、当時の自分達は、通っていた学校がどうのと言うレベルを超えて、住んでいた場所(国?)や家族構成、人生観に至るまでの、つまり、ある意味年齢と性別以外のどこを擦り合わせれば互いに良いあんばいの落としどころが見付けられるのか、それが分からず時に口論に発展する程に「価値観」が異なっていた。

    でも……

    「ただいま」
    「お帰りなさい」

    世間の休日とは無関係な仕事だから、仕方のない事とは言え、この(世間で言う)連休にもキラは毎日、なんだかんだと仕事に出ていた。

    「今日は早かったんだな?」
    「いいじゃん、早く帰りたくて頑張ってきたんだし」
    「はいはい。別に文句ではないんだ。少し驚いただけ」
    「つれないなぁ」
    「そうか? 丁度夕飯が出来た所だったから、こちらとしては良かったなと思ったところなんだが?」
    「あ、やった。確かに良い匂い。と、そうだ。今日出先でさ……はい、お土産」

    はい、と渡されたのは小さな紙の手提げ袋。
    そして……

    「和菓子?」
    「そう。おはぎ。シャイさんには胡麻にした」
    「有り難う。でも夕飯はカレーだけれど、重くないか?」
    「問題ないでーす」
    「そうか」

    ちなみに自分は、和菓子ならまだどうにか、とは思うけどそもそもそこまで甘い物は得意ではない。

    でも、胡麻ならばなんとかいける。

    とは言え(カレーの方の)お米は減らそう。

    「あ……そうか……」

    単なる連休と言う認識だったが、おはぎを見てその意味をふと思い出す。

    昔、自分とはどこもかしこも噛み合わない、そう思ったのに、心のどこかで「でも彼は大丈夫」そう思えたのはその当時にも「こんな事」をするキラのさりげない習慣のせいだった。

    「キラ」
    「んー」
    「あぁ……いや……」
    「どうしたん?」

    あぁ手の早い。
    こちらがぼけっとしている間にいつのまにか夕飯のカレーが盛りつけられていた。

    「ご飯は少なめにしておいたぞ?」
    「うん」
    「で、なんじゃい?」
    「いや、明日も……仕事?」
    「ふっふっふー」
    「???」
    「朝一の生放送で終わりになったぞ」

    そうかそうか。

    「と言う訳で、シャイさんは午後、空いてる? と言うか……」
    「急ぎは抱えていない」
    「そっか」
    「だから……付き合える」
    「そう?」
    「いやでなければ」
    「いやなわけあるかい」
    「そう?」
    「あぁ。じゃぁ昼からデートしよう。デート。さくっと終わらせて真っ直ぐ帰ってくるから、それまで待ってて」

    そう言いながら嬉しそうに「さて、どこに行こうか」そんな話をし始める。
    どこか、と言ってもある程度限定されてしまうはずなのだが、それでもそう言って楽しそうに行き先を考え始めるキラの様子に、なんだか意味もなく幸せだなと感じる。

    でも、こんな些細な、そうして他人にとってはささやかとも言えるこう言った何気ない会話や時間を自分はとても幸せだと思う。




    「オレの方でなにか用意しておこうか?」
    「いいや、大丈夫。買い物は途中ですれば良いじゃろう」
    「そうか? じゃぁ支度だけしておく……と言うか、途中まで行くか?」
    「一旦戻るから家で待ってて。生だし時間が押すことはないから大丈夫」

    まるっと1日休み、と言うような事にはなかなかならない。
    でも、生憎暇を持て余すような状況を、俺達はお互い、好まないから、それに対する不満はなかった。

    そうしえこの考え方は、そう言えば最初から互いにそうだった。

    まぁ、単にどちらも負けず嫌いだったから、と言うのもあるがそれでも、動く時も止まる時も一緒であることに違和感を感じずにいられるのはとても幸せなことだった。

    「とりあえず目標11時半帰宅、って感じなんで昼はどっかで食べよう」
    「分かった。行ってらっしゃい」
    「行って来ます」

    そんな会話を交わせる事が、時々少し不思議に感じる。

    でも、こんな会話を交わせることが、一緒に暮らしていることの証と思うとなんだか面白くもあり、嬉しくも思う。

    絶対一緒に生活なんて、出来無いと思っていた。

    なのに気が付いたら、一緒に居ることが気楽に感じられた。

    逆に言えば、気楽過ぎてだめだなぁと思う位、長く一緒にいる時間が増えるほど、細かな部分で「おや?」と思う事が増えた。

    昨日の「おはぎ」もそんな感じで、普段は一切食べないと言う訳でもないのだが、お盆やお彼岸になると必ず、キラはそうやって今は居ない人達を思った行動を取る。

    それに気が付いたのは出会って一年ほど経った頃だったけれど、高校の受験やレッスンに忙しい中、どこへ行くのかと思えば墓参りだとそう言いだしたのには驚いた。

    ただ当時の、今程落ち着きのないキラとは大分違う、当時のキラの見た目からは想像も出来無い行動に「あれ……?」と引っかかる物を感じた。

    「墓はあるけど、それ以上はなにもなくて。だからせめて墓参りだけは欠かしたくないんだ」そんなキラの言葉に、キラの苦労や育ってきた環境の複雑さは感じても、何かが出来るわけでも言えるわけでもなかった自分が、それでもそう言ったキラの行動に、好意を持ったことも事実だった。

    そうして……

    周囲と馴染めなかった自分と、それとは意味は違うがやはり少し浮いていたらしいキラの、ある意味「共通した感覚」のようなものもそこに感じた。

    「買い物、しておくか」

    出掛けようと張り切ってはいたが、その前提に「お盆だから墓参りに行きながら、帰りにどこかへ行こう」とそれらがセットなのは少し不思議で、いや不思議ではないのかもしれないけれど、そこに最近は当たり前のように同行を許されている自分がなんだか不思議で。

    けれどもいつの頃からか、それを、勿論こちらの都合は聞いてくれるが普通に誘ってくれるキラの気持ちを自分は嬉しく感じていた。

    まるで自分が、彼の身内になれたようで、いや勿論それは言い過ぎなのかもしれないけれど、でもそうやって、自分の完全なるパーソナルスペースに、自分の事をいれてくれることがやはりとても幸せだった。

    それでいいのか、と思った時期もあったけれど、自分が伴う事を喜んでくれることが嬉しくて、可能な限り(まぁ駄目な事もないのだが)一緒に行かせてもらうようになった。


    幼い頃は、なんで法事なんてものがあるんだろう、と正直思っていた。
    うちの実家の墓はそもそも大きすぎて、それから数が多すぎて……意味すら分からない子供にはただただつまらない儀式だった。

    その後海外に行ってからは、誰かしらが行っていたのだろうけれど自分が墓参りに行くようなこともなくなったし、更に言えば、今はむしろキラの方にばかり行っている感じだった。
    (うちの両親は健在なので、まぁまだまだ大丈夫そうだし……)

    でも、それでいいように思うのだ。
    冷たいのかもしれないけれど、良くも悪くも自分の家は身内も親戚も多いので、自分1人がいるいないでなにが変わるわけでもない。

    結局の所、なるようにしかならないのだ。

    子供だからと言って、親より先に死なないわけではないし、仮に結婚したからと言って、それで跡継ぎが出来るかどうかなんてやっぱり保障の限りではない。

    それにそもそも、自分が躍起になって守る意味のある家かどうか、も分からない。

    うちの家系は自由人が多いし、そうでなければ海外になど行かせるはずもない。

    しかも、なんだかんだで最近は、母とも以前よりは連絡を取るようになった(と言うか押し掛けてくると言うか)ので、おそらくまぁそれはそのまま父の方にも色々と話しが行っていると言う事で、それで特にうるさくないのは、複雑ではあるが自由にしていていい、でもその代わり完全には切らせない、と言う事でもあるのだろう。(その分母がうるさいけれど、まぁその程度は……)

    つまり、今の自分自身の生活環境を守ることが最重要なのだ。

    ……と、自分が一杯一杯だった時期に、潔く家の事は割り切った。

    自分が息をし続ける為に必要なものはなにか、そう思った時に今の生活を変えることは無理だったからだ。

    『でもきっと、キラのご両親がいたらこんな風にはいられなかったと思う……』

    ごめんなさい。結局自分勝手なのだ。

    でも、何かしらで必ず返すから許してほしい。


    「ただいまぁ」
    「お帰りなさい」

    自分より先に気付いたソーさんに、戻ってきただろうことは分かっていたが、出迎えはソーの仕事ととりあえずお茶の支度をしようと席を立つ。

    いくら何でも一休みくらいするだろうと思ったのだ。

    「あーっとシャイさん、すまん。座ると立つのが面倒になりそうだからすぐ出る」
    「え? そうなのか?」
    「時間が勿体ない」

    成る程。

    「昼は?」
    「あとで食べよう後で……って、買い物してくれた? ごめん」

    とは言っても、活ける分の花と、飲み物と万一の為の軽食くらいなのだが。
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