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    遊兎屋

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    遊兎屋

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    【虎伏】現パロR15
    消防士虎と獣医伏の馴れ初めのお話

    #虎伏
    ItaFushi

    ワンライお題【子供/動物】
    消防士虎×獣医伏






    いつからか、動物病院の中から見える景色に淡い桃色の髪の毛が跳ねて見えるようになった。

    初めは派手に染めてるな…
    なんて思ってたけれど、その桃色の人物が実は公務員で、しかも近くにある消防署の消防士で、出動が入らない時間、もしくは休憩時間に動物病院を含めた消防署の周りを走っているのだと知った。
    イタドリさん…
    ひょんなことに名前まで知ってしまってなんだかそわそわしてしまう。

    その名前を知るきっかけは突然で、朝たまたま飼い犬の散歩で消防署を通り掛かった際、丁度車の点検をしていたのか、消防署のガレージで元気な声が聞こえてきた。
    サイレンを鳴らして赤灯を回す
    その確認をして、車を拭いていたのが見えて、いつも病院内で見る桃色の人だとそこで気づいた。

    あっと思った瞬間、目があってびっくりする。
    やばい、見すぎてたか?
    驚きに固まっていれば、大きな瞳が俺の顔からすいっと下にズラされて少し目が見開かれる。
    車を拭いていたタオルを握り締めてずんずんと歩いて距離を縮めてきたその人の威圧感に少し後退りする。
    小さいと思っていたけれど実際に近づいてみれば背はそんなに変わらない…
    それどころか少し姿勢の悪い俺と比べると高いくらいかもしれない。
    それに加えて筋肉がしっかりと付いているからか、分厚い。

    「名前なんて言うんですか?」
    「え…」

    勢いに圧倒されていたら急に名前を聞かれてどきりとする。
    戸惑いに小さく声が漏れて固まれば、ぱっと笑った男が俺の足元でじゃれつく白と黒の犬を見る。
    ああ…そっちか…
    いや、なんで残念がってんだ俺

    「白いのがシロ、黒いのがクロ」
    「うそ、そのまんま?」
    「おう」

    短く教えてやればあんぐりと口を開けてあらまーっと声を上げながら足元にしゃがみ込む。
    ふんふんと鼻を鳴らしながら匂いを嗅ぎ近寄る2匹にゆっくりと手を伸ばしわしゃわしゃと撫で始める。

    「よすよす〜可愛いなー」
    「犬、好きなんですか?」
    「うん、犬も猫も好き」

    動物好きだという奴は沢山いるけれど、動物好きの中でもこんなにも動物に好かれる奴はなかなかいないと思う。
    ついこの間、白いラグドールに鋭い小さな爪で引っ掻かれた指の根本を撫でる。
    病院好きな人間があまりいないのと同様に病院好きな動物もあまりいないと思う。
    注射を打つ手を憎しみ攻撃してくるのは仕方ない。
    それでもやっぱり好きな動物に攻撃されるのは少し悲しいもんだよな…
    尻尾をぶんぶんと振りながら、珍しく人に懐く2匹に目を細める。

    「おい!イタドリ!っナンパしてんじゃねぇ!真面目に拭け!」
    「うぉ、やべっ、」

    急に聞こえた大声にビクッと肩が跳ね、同様に2匹も驚いたのか声の方を向く。
    声が聞こえた方には豪快に笑いながらこっちを見ている40代ぐらいの日に焼けた男性が立っていてなんだか居た堪れなくなり会釈する。

    「すんません、あざした。シロクロまたなー」
    「いえ」

    ぺこっと頭を下げて満面の笑みで2匹に手を振って走って車の下に戻る…いたどり、さん。
    いたどりって言うのか。
    多分上司だろう男性の元に走って行ったイタドリさんが頭を小脇に抱えられて揶揄われてるの怒られてるのか、ガレージが騒がしくなる。
    くんっと持っていたリードが引かれて、足元を見ればクロがリードを噛んで引っ張って先を促してくる。

    「ん、帰るか」





    それが1回目の出会い
    それから何度か…
    いや、別に散歩のコースを変えたとかそんなんじゃ無いけれど消防署の前を散歩して、イタドリさんに会った。
    決まってシロとクロを撫で回して他愛もない話をちょろっとする。
    年は俺と同じ25歳で名前は虎杖悠仁
    春から所属が変わってこの消防署に勤務になったらしい。
    次第に口調も砕けてきて、俺からもちょっとずつ話をする機会が増えた。
    近くの動物病院に勤めている獣医だと言ったら「あ、やっぱり?」なんて言われる。
    動物病院の近くを走る際に、外に出てきた白衣姿の俺を見たことがあるらしい。
    それから毎日、決まった時間、決まった散歩コースを歩くようになった。
    虎杖の勤務サイクルは知らないからいる日もあればいない日もあって、消防車が出払っている日だってあった。




    いつもより少し遅い散歩時間
    消防署の前を通り掛かったところで賑やかなガレージに目が行く。
    ピンクや黄色の帽子を被った子供たちがきゃーきゃーと笑い合いながら消防車を触ったり見学したりしていて、奥では小さな消火器を使って水を出しているのが見える。
    ざっとガレージの中を見た後、どうしても虎杖の姿を探してしまう。
    今日は居ないのか、仕事中なのか。
    そう思っていれば聞き慣れた声が耳に入ってくる。
    楽しそうに笑いながら子供を相手にしているのが見える。
    動物だけじゃなくて子供にも好かれるんだな…
    邪魔になるだろうしまた来た時に会えればいいか。
    そう思って視線を下げればクロもシロも今日は駆け寄ってこない虎杖を見て、心なしか少し残念そうだ。

    2匹の頭を慰めるように撫でてガレージから離れようとした時、ばちりと虎杖と目が合う。
    俺の存在に気づいたのか、ちょっと目を見開いて満面の笑顔で手を振られる。

    園児たちがこっちを一斉に見てくる。
    虎杖に気付いて貰えたのが嬉しい反面羞恥心にじわじわと顔に熱が集まるのが分かり、腕で口元を隠す。

    「わー、わんわんだ!」

    数名の園児がシロとクロに惹かれて近寄ってきて興味津々に手を伸ばす。
    子供特有の容赦ないタッチにもシロとクロは利口に座り対処する。
    可愛い可愛いと撫でる小さな手を見て、比較して虎杖の大きな分厚い手を思い出し頭を振る。
    ばか、思い出すな。

    「触らせて貰ってもいいですかー?」
    「凄いねー、みんなも触わらせてもらいな?」

    少し高い声、園児たちに呼びかける声に顔を向ければ、保育士の女性が虎杖に触っていて何故だかずきっと心臓が痛んだ。
    他の保育士さんがシロクロに触っていた園児を引っ張っていき、2匹は解放されたようでぶるぶると身体を振るわせるのがリードから伝わる。

    恥ずかしそうにはにかむ虎杖と、女性の絡みにもやもやとして、さっき手を振って貰って喜んでいた気持ちが冷める。
    ああ、そうなのか…俺は…
    痛んだ心臓に手を当てて、突きつけられる自分の気持ちに納得する。
    結局その日は傷む光景から視線を逸らして重い足で消防署を後にした。


    ただ、納得してからというもの消防署の前を通るとドキドキするし、虎杖がいなければ少し悲しい。
    向けられる笑顔が嬉しいし、時々消防署のガレージでやっている訓練中の真面目な顔は物凄くかっこよく見えてくる。
    一方的なそれを伝える事も出来ず、変わらない関係をだらだらと続けている。
    踏ん切りが付かなくて、この心地いい関係を変えたくもなくて結局ずっと黙ったまま。
    消防署で働く消防士と、消防署の前を散歩で通り掛かる獣医
    それだけの関係。




    「あっ!伏黒!!」
    「おぅ、おはよう」

    今日もその関係は変わらず、朝の挨拶をして駆け寄ってきた虎杖にシロとクロは尻尾を振る。
    なんの話をしようか、他愛もない短いどうでもいい話を考えて口に出そうとしたら虎杖の声に遮られる。

    「俺さー、来月で所属変わるんだわ」
    「…は?」

    よすよすーなんて言いながら2匹を撫でて、軽く言われた言葉が理解出来なくて聞き返す。
    違う、理解はできてる。ただ分かりたく無いだけだ。

    「この消防署じゃなくて、別の出張所…あー、坂の下にもちっこいのがあるんだけど、そっちに異動になった。」

    異動…
    じゃあこの消防署に来てももう会えなくなるのか。

    「そうなのか…まぁ、お前なら大丈夫だと思うけど、身体に気を付けて頑張れよ。」

    きっと風邪すら引かないだろう虎杖になんて声を掛けたらいいか分からず口走る。
    俺のあっさりとした返答に虎杖が眉を下げる。
    つきりと胸が痛みを訴える
    それを無視して笑いかければ、リードを持っていない手を握られてじっと見つめられる。

    「本当はこんな事したら駄目だけどさ…俺、伏黒と此処でバイバイってのは嫌だし良ければ連絡欲しい。」
    「…え」
    「嫌だったらそれ、捨てちゃって」

    握られた手はやっぱりデカくて分厚くて、タコの出来た手の平は硬かった。
    ぱっと離れた虎杖が時計に目を落として、混乱する俺にじゃ、と手を上げてガレージの奥に走っていく。
    急な展開に詰まっていた息を短く吐き出す。
    軽く握り締められた手を開いてみれば、少し皺くちゃになってしまった黄色い付箋
    アルファベットと数字が書いてあるそれにカッと身体が熱くなる。
    は…?はぁ?うそだろ

    どきどきと心臓が跳ねて気持ち悪い。
    信じられなくて手の中の黄色い付箋を何度か見返す。
    淡い期待と、それを嗜める自分の理性
    ぐるぐると回る頭をどうにか落ち着かせて、足元を見る。
    舌を出して尻尾をゆるりと揺らした2匹がワンっと短く鳴く。







    「でさー、その人が俺に水ぶっかけてきて…」

    やばい、、
    なんで俺此処にいるんだ。
    いや、連絡したのは俺だけど…

    虎杖と2人で居酒屋の個室
    虎杖おすすめの店なだけあってご飯も酒も雰囲気も良い…。
    消防士という職業に偏見があると言えば、女遊びが激しそう。
    そういうイメージを自分の中で持っている。
    職業も体格も性格も、全てが揃っててこれでモテないはずが無いだろうと思う虎杖
    惚れたせいでフィルターが掛かってるのかも知れないけれど、この居酒屋に入った時の手慣れた虎杖を見て少しもやっとした。

    連絡をとって虎杖から「個室でも良い?」なんて聞かれた時は何故かと思ったけれど、確かに虎杖の職業上、開かれた空間で喋りにくいことなんて山ほどあるだろうしいろいろと制約がつくのだろう。
    でも、なんで横に座るんだよ、ばかか。
    普通向かい合って座るだろ。
    俺が座った後に横に座ってきた虎杖に頭がパニックになりそっからずっと緊張しっぱなしだ。



    連絡先を渡された日
    ずっと夢じゃ無いかとその日1日付箋を持って何度も確認した。
    次の日に本当に連絡して良いのかも自信が持てなくて、書いてあるアルファベットを友達検索枠に入れてみた。
    確認のため一応入れてみたそれが検索で引っかかり出てきた名前に驚いて一度携帯をぶん投げた。
    本当に虎杖の連絡先だった。
    壁にぶつかり床に落ちた携帯を恐る恐る覗き込み、友達申請するのに指が震える。
    荒く息する俺を心配してから、クロが擦り寄ってくる。
    勇気を振り絞ってちょんっと画面をタップする。
    タップが弱かったのか反応しないアプリに、なんだか人の純情をいたぶられている気さえしてきて、もう一度躍起になって画面をタップする。

    "友達申請しました"

    それから、震える指で
    伏黒恵です。
    連絡先教えてくれてありがとう
    異動した先でも頑張れよ
    と当たり障りのないメッセージを送る。

    そっけなく無いだろうか、あまり絵文字は使わないから少し心配になる。
    メッセージを送った達成感に、ふーっと息を吐いてベッドに横になる。
    今仕事中だろうか…
    早く返信が来てほしいと思う反面、気持ちの準備が出来ていないからもう少し時間をかけて欲しいと思う。
    ソワソワする気持ちに、恋をしてるんだな俺は、と改めて自覚してなんとも言えない浮つく感覚に落ち着かない。

    改めまして、虎杖悠仁です!
    連絡来ないからメモ捨てられちゃったのかと思った
    連絡してくれてありがとう!
    早速なんだけどさ、今度呑まない?

    ベッドに横になって直ぐに通知音が短く鳴って、メッセージが届いたと画面に浮き上がってくる。
    泣き顔の絵文字
    それから、呑まない?という文字にうわっと声が上がる。
    そうだよな…連絡先交換してはい終わりじゃ無いよな。
    そりゃそういう流れになるよな。
    するすると話が進んでいくことにもともと根暗だと自覚している自分としては戦々恐々としながら画面をタップしていく。
    日程を決めて、明日仕事だからもう寝るねという虎杖に短く返信して携帯を置く。

    「…はあ」

    疲れた…
    ずっと連絡が来るのを待っていたといった虎杖に嬉しさと期待が湧き上がる。
    ただ、普段から距離の近い虎杖としては年の近い、違う職業の友達が出来ただけなのかもしれない。
    男同士だ
    期待するだけ無駄だし、その後に辛いのは自分だ
    いつかボロが出てしまいそうで怖い




    「伏黒、もしかしてつまんない?」
    「…っ、え?」
    「いや、ぼーっとしてたから」

    ぐっと横から顔を覗き込まれて、意識が現実に戻ってくる。
    少し心配そうな虎杖に瞬きをして首を振ればそう?なんて首を傾げながら渋々元の体勢に戻る。
    ドキドキと心臓が跳ねる。
    緊張を紛らわせるために普段あまり呑まないアルコールをペース早く呑んでいく。
    こうやって友達と…片想いの相手とだけど、呑みにいくなんて今まで無くてどうして良いかよく分からない。

    「ここのさ、ほっけ美味いから食べてみて。伏黒日本酒いける?」
    「日本酒…は呑んだことない」
    「マジ?んー、呑んでみる?呑みやすいのあるよ」

    メニューのページをペラペラと捲りながら楽しそうにする虎杖に少し安心する。
    それから暫くして店員を呼んで、テキパキと注文していく虎杖の声を聞きながら、ジョッキを傾ける。






    「ふしぐろさーん、大丈夫?」
    「ん、だいじょうぶ」

    あれから杯を重ねて、勧められたほっけは美味しかったし日本酒と合って直ぐに無くなった。
    出された日本酒も殆ど虎杖が呑んだけれど、呑みやすいのに甘過ぎず、後からカッと喉が熱くなるような辛味が効いていて美味しかった。

    「んー、大丈夫そうじゃないね」
    「だいじょうぶだって言ってんだろ…」
    「伏黒美味しそうにするからついつい勧め過ぎちゃった」
    「ぜんぶうまかった」

    虎杖と2人で会話して、美味しいご飯やお酒を飲んでとても楽しかった。
    ふわふわと浮つく頭で笑えば虎杖が息を呑むのが聞こえる。

    「ありがとな、きょう楽しかった」

    また誘って欲しい。
    なんて言葉、俺には言えない。

    重くなってきた瞼と、ぐらぐらと揺れる頭…
    力の入らない足
    呑み過ぎたな…
    いったいどれだけ呑んだのか、あまり思い出せない。
    虎杖が何か言っているのが聞こえるけれど、聞き取れない。
    グッと脇に手を入れられて腕を掴まれ身体が浮く。
    それから虎杖の顔が近付き、肩を組んでいるのかよたよたと覚束ない俺の足取りを補うように虎杖が腰を支えてくる。

    離せと言おうとして顔を上げれば虎杖の男くさい顔が目に入る。
    あれ、こいつ、こんなに男っぽかったか?
    いや、男だけど、普段笑顔を浮かべることが多いから柔らかいイメージがあって、なんだか見てはいけないようなものを見た気がして見てないふりをするために顔を伏せる。

    どこに向かって歩いているのか
    居酒屋を出て虎杖に支えられて少し冷える外を歩く
    アルコールはまだ抜けない
    ピッタリとくっ付く虎杖からじんわりと体温が移ってきて、アルコールとは別の熱が身体の体温をあげていく。
    暫く歩いて、虎杖の足がマンションの中に進んでいく。もちろん俺の住んでいるマンションじゃない。
    早鐘を打つ心臓に肺が機能してないと思うほど息苦しさを感じる。
    隣の虎杖は帰路ずっと無言だ。
    今も、何を思って酔っ払いの俺を支えてくれているのか…
    公務員だから、酔っ払いが面倒ごとを起こして虎杖の責任になるかもしれないから…
    虎杖は良い奴だから、酔いが覚めるまで休ませてくれるのか…

    エレベーターから降りて家のドアの前まで歩く。
    片手でポケットを漁る虎杖が鍵を開けて、少し止まる。
    それからゆっくりとドアが空いて、虎杖の部屋の中に招き入れられる。
    ああ、帰ったほうがいい。
    ここにきて今更自分の中の警報が発動する。
    ただ、アルコールで鈍った頭は自分の利益を優先する。
    片想いの相手だ
    もう散歩で会うこともできないし、今回情けなく酔っ払ったせいで次誘われるかどうかも分からない。

    こくりと小さく喉がなる。

    「伏黒、大丈夫?」
    「ん」

    ソファーに座らされて一度虎杖がキッチンへと向かう。
    虎杖の匂い…
    変態か、俺は
    意外に整理されている部屋をゆるりと見渡して、生活感のある空間に緊張を吐き出すようにゆっくり息を吐き出す。
    まだぼんやりと霧がかった頭でソファーに身体を預けて目を瞑る。


    「伏黒」

    名前を呼ばれて慌てて目を開けば、思った以上に近くに虎杖の顔があってビクッと身体が跳ねる。
    目の前に立つ虎杖が、ソファーの背もたれに手を突いて俺を囲うように位置取る。

    「ねぇ、無防備すぎ」
    「ッ、いた…どり」
    「俺、そんなに善人じゃねぇよ?」

    口が乾く
    首を傾げて大きな瞳がじっと俺を見つめて来る。
    するりと手が伸ばされて、まだアルコールで熱い頬を撫でられる。
    急な展開についていけなくて、でも内心で期待していた展開に短く息を吐く。

    「伏黒、嫌だったら言って…」
    「あ…」

    頬を撫でていた手が後頭部に回って頭を固定される。
    あっと思った時にはふにりと唇に柔らかい感触がして、驚きで目を見開く。
    嘘だろ…
    キスしてる…

    「んっ、う、んンッ」

    啄むようなキスから唇を舐められ誘われるように開いた口に虎杖の熱い舌が入り込んでくる。
    口の中を舐められ腰が跳ねる。
    気持ちいい…
    頭の中がぐらぐら揺れて何も考えられない。
    ちゅっ、じゅっ、
    唾液の絡む音と俺の荒い息遣いが部屋に響いて、熱が昂る。
    もっと欲しくて、感じたくて、目を瞑って分厚い舌に自分の舌を擦り付ける。

    「は、んぅ、ふ…、ンンぅ」

    徐々に激しくなるキスに涙が溢れてくる。
    気持ち良くておかしくなりそうだ。
    アルコールを含んだ状態で正常じゃないのかもしれないけれど、虎杖が俺を欲してくれてる。
    それだけで幸せだ
    唾液が糸を引いて、手の甲で口元を拭う虎杖の目がゆらりと揺らめく。

    「はぁ…、ッ、伏黒、俺…期待してもいい?」

    蕩けた身体が、虎杖を欲する。
    一夜の過ちでも良い…
    性欲処理でもなんでも良い

    「…いたどり、お前をくれ」
    「ッ」

    欲情した、獰猛な瞳が俺を射抜く
    その必死さに、自分の中の独占欲と優越感が満たされる。


    今だけはおれのもの








    end
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