閣下誕生日凪砂の逞しい腕が茨の腰のあたりをぎゅうと抱きしめる。茨が着ているパジャマ代わりのライブTシャツの裾にすっぽりと頭を入れて、静かに息を吸い込んだ。ボディーソープの甘い香りの中に茨の匂いを嗅ぎつけて一息つく。可哀想に伸びきったTシャツはもう使い捨てるほかないだろう。
素肌の腹に顔をぴったりとくっつけられて、茨は落ち着かないようだ。
退避したい気持ちをじりっとした身動ぎで誤魔化せば、察しの良い最終兵器は拘束具ばりにぎゅうううっと締めつけを強めた。
腕の力強さに反して、腹を撫でる頬は幼子が母親に戯れるようにくすぐったい。こちょこちょに弱いジュンならば大爆笑してたかもしれない。……などと、茨の頭に他の男が過ぎったことすらも察した凪砂は頬を徐々に膨らませ「私は怒っているよ」という主張を腹越しに伝えた。
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