「指輪」「涙」涙の数だけ強くなれる、なんて嘘ですよ。泣いたら泣いた分だけ惨めさが増すだけです。
そう言っていた茨が、私の目の前で泣いていた。声もなく、しゃくりあげもせずにただ雨粒が静かに床に染み込むように、涙が流れていく。
真っ赤に腫れた目蓋に触れないように、よしよしと頭を撫でようと手を伸ばしたら逆に手首を掴まれてしまった。
「お〜と!自分に触れてはいけませんよ閣下!おそらくOCガスの催涙スプレーでありますから後遺症などの心配もございません!ただ、カプサイシンが主成分なので皮膚に触れるとピリピリする恐れがあります。自分は訓練されているので平気ですよ!」
「でもどう見ても痛そうだし、涙もものすごく出てるよ」
「なあに1時間もすれば元に戻ります!ちょっとお見苦しい姿を晒してるのはなかなか業腹ですが……名誉の負傷とでも思えば我慢も出来ましょう。ええ!下手人はちゃんと捕えましたしね!」
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