風待ちオレンジ 高校の入学式の日、イギリスに引っ越していた幼馴染の風真くんと九年ぶりに再会した。同じはばたき学園に通い、クラスも同じで。もう偶然じゃ片付けられないと、彼とは運命のようなものを感じた。しかし――。
「俺たち進歩が無さ過ぎ」
高校三年間、風真くんとは何の進展もなかった。教会の扉も開かなくて、あれ……? こんなはずじゃなかったんだけどな……。入学式の日から思っていたのと全く違う三年間になってしまった。
「ほら、喫茶店行くぞ?」
これから二人で大反省会だと風真くんに喫茶店へ連れて行かれる。おまえには入学式からの三年間をたんまり振り返ってもらうと風真くんに言われ、この三年間を振り返ってみると、
「えぇと……勉強ばかりしてた三年間だったかな?」
名門校であるはば学の授業はついていくだけでも大変だったし。風真くんも成績優秀だから、幼馴染として恥ずかしくないように勉強を頑張った。お陰で三年生になると、テストは学年一位を取れるようになり、風真くんと同じ一流大学にも進学できそうだけど。
「そうだな、確かに勉強は大事だ。でもさ、勉強だけが高校生活じゃねぇだろ?」
「そうだよね。部活やバイトもだし、体育祭とか文化祭とか学校行事ももっと頑張れば良かったかな」
「そうじゃなくて、もっとほら……俺とのこととか」
「えっ?」
「えっ、じゃねぇんだよ……ったく。おまえが一番反省すべきはそういうところだ。分かったな?」
そういうところってどういうところ……? それからも風真くんからの小言は続き、すっかり夕方になっていた。
「ねえ、風真くん」
「なんだよ?」
思えば、入学式で再会したあの日から昔のように彼を名前で呼んだことは一度もない。小学生の頃からすっかり大人っぽく成長していた彼を昔のように“りょうたくん”と呼べなくて。同じく風真くんもわたしを高校からは苗字で呼んでいた。
「りょ……」
せめて最後は彼を玲太くんと名前で呼ぼうとしたそのとき、