或る秋の一日 ある日のこと、家で江澄が先日入手したばかりのスマートフォンをいじっていると、ジーッと来客を知らせる音が鳴った。茶坊への客か? と思いながら、のそりと立ち上がり玄関の扉を開くと、そこには小包を持った配送業者が立っていた。荷物に心当たりはなく、同居している藍渙からも特に何も聞いていなかったものの、配達先は確かに自宅になっていたためサインをして受け取った。
……という出来事があったのを、ふたりで夕飯を食べた後、唐突に思い出した。仙となった身であるので、別に飲食を喫さなくても問題なく生きてゆけるが、食は江澄の楽しみのひとつである。今日は季節柄、いい蓮根が手に入ったので久しぶりに蓮根排骨湯を作ったのであった。相変わらずの好物は、染み渡るようなやさしい味がした。
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