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    takami180

    PROGRESSたぶん長編になる曦澄その5
    兄上はおやすみです
     昼時を迎えた酒楼は賑わいを見せていた。
     江澄は端の席から集まる人々をながめた。
     やはり商人、荷運び人の数が多い。
     川が使えないといっても、この町が交通の要衝であることに変わりはない。ここから馬に乗り換えて蓮花塢へ向かう者も多い。
     まだ、活気は衰えていないが、川の不通が長引けばどうなるかはわからない。すでに蓮花塢では物の値段が上がっている。これ以上、長引かせるわけにはいかない。
     そこに黒い影が駆け込んできた。
    「お、いたいた、江澄!」
    「魏無羨!」
     彼は江澄の向かいに座ると、勝手に酒壺をひとつ頼んだ。
    「何をしにきた。あいつはどうした」
    「んー、ほら、届ける約束だった写しを持ってきたんだよ。藍湛は宿で沢蕪君と話してる」
    「何故、お前たちが来るんだ」
    「写しだって、蔵書閣の貴重な資料だから、藍湛が届けるんだってさ。俺はそれにくっついてきただけ」
     魏無羨はやってきた酒壺を直接傾け、江澄の前の皿から胡瓜をさらっていく。
     江澄は茶碗をあおって、卓子にたたきつけるように置いた。
    「帰れ」
    「藍湛の用事が終わったら帰るさ」
     魏無羨がまたひとつ胡瓜をつまむ。
     江澄は苛立ちを隠すこ 2255

    takami180

    PROGRESS長編曦澄10
    兄上やらかす
     夜明けの気配がした。
     藍曦臣はいつもと同じように起き上がり、ぼんやりとした薄闇を見つめた。違和感がある。自分を見下ろしてみれば、深衣を脱いだだけの格好である。夜着に着替えるのを忘れたのだろうか。
    「うーん」
     ぱたり、と藍曦臣の膝に何かが落ちた。手だ。五指をかるく握り込んだ手である。白い袖を視線でたどると、安らかな寝顔があった。
    「晩吟……」
     藍曦臣は額に手のひらを当てた。
     昨夜、なにがあったのか。
     夕食は藍忘機と魏無羨も一緒だった。白い装束の江澄を、魏無羨がからかっていたから間違いない。
     それから、江澄を客坊に送ろうとしたら、「碁はいいのか?」と誘われた。嬉しくなって、碁盤と碁石と、それから天子笑も出してしまった。
     江澄は驚いた様子だったが、すぐににやりと笑って酒を飲みはじめた。かつて遊学中に居室で酒盛りをした人物はさすがである。
     その後、二人で笑いながら碁を打った。
     碁は藍曦臣が勝った。その頃には亥の刻を迎えていた。
    「もう寝るだけだろう? ひとくち、飲んでみるか? 金丹で消すなよ」
     江澄が差し出した盃を受け取ったところまでは記憶がある。だが、天子笑の味は覚えて 1652