コショウ、ジンジャー、シナモン、◯◯ 水洗いしといたレンズ豆と、缶詰から出したひよこ豆が、スープの海にとぷんと沈む。
ぶくぶく沸いてきたら弱火にして……えっと、どのくらい煮込むんだっけ。まあ、とにかく、ジャミルの目が覚めるまでコトコト煮とけばいいだろ。
動かし続けてた手を止めたら、ふわあと大きな欠伸があふれでた。背もたれもない小さなスツールを引き寄せて、ちょいと腰を下ろして一休み。
こども用みたいにちっこくて丸い木の座面、その端っこには、黒茶けた焼け焦げの痕が残ってる。それを指先でなぞって、オレはふふっと笑う。いつだか、オレが[[rb:厨房 > ここ]]を爆発させちまった時の傷だ。
ごめんなあ、と詫びるような気持ちで触れたのに、木肌のやさしい指ざわりは、ほこりとオレの胸をあたため返してくれた。
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