「笑顔」 雑伊+保「……え!?」
その日、保健委員委員長、善法寺伊作を迎えたのは、下級生たちの戸惑いの叫びだった。
「いや……集中してたら足元がおろそかになって」
照れたように笑う伊作に五対の幼い瞳がじっと注がれている。みな声を出すのも忘れて驚いているのだ。
「そんなこと言ってる場合じゃないですよ!」
最初に我に返ったのは、二年の川西佐近だ。
「先輩の運の悪さは承知しております。けど――」
伊作の運の悪さは折り紙付きだ。保健委員である以上、その事実は自分たちにもつきまとっている。伊作の惨状は、ちょっと山へ入って少なくなっている生薬の種を見つけてこようとして落とし穴に落ちたか、罠にかかったかしたに違いない。そんなことは説明されなくてもわかっている。
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