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    なりひさ

    @Narihisa99

    二次創作の小説倉庫

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    なりひさ

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    キスの日のガンマト

    #ガンマト
    cyprinid

    キスの日 マトリフにはガンガディアがキスをするタイミングがわかる。マトリフは機嫌が良ければそれに応じるし、忙しければさっさと離れてしまう。そうしたらガンガディアは少し残念そうにするものの、執拗に要求することもない。
     今もガンガディアはソファの隣に座るマトリフをそっと見下ろしてくる。ガンガディアはマトリフの暇な時と忙しい時を見分けようとしてくる。マトリフはちょうど読んでいた本に飽きていた。ページを捲る速度が落ちてきて、視線も本から離れがちである。そういったことをガンガディアはつぶさに観察していた。
     かちゃり、とガンガディアが眼鏡を置いた音がマトリフにも聞こえた。マトリフは読んでいなかった本の文字へと視線をやりながら、ガンガディアの手が伸びてくるのを待った。
    「マトリフ」
     遠慮がちにマトリフの頬へと触れた手に、素気なく視線をやる。しょうがねぇな、という雰囲気で本を閉じれば、そこでようやくガンガディアが頬に口付けてきた。最初は甘く、誘うように。そしてマトリフが嫌がる素振りを見せなければ、唇を塞がれる。
     マトリフは薄らと目を開けながら眼鏡のないガンガディアを見る。ガラスを通さない瞳の色を眺めながらマトリフは本を手放した。そのまま腕を伸ばしてガンガディアの首筋に触れる。刺青を指先でなぞれば、ガンガディアは唇を離して身体を寄せてきた。鍛えられた身体がマトリフを圧迫する。マトリフはソファの隅へと追い詰められた。再び頬に当てられた指が、頬骨から耳へと撫でていく。
     くすぐってぇよ、と文句を言う前に、また唇を塞がれてしまった。最初は触れるだけの軽いものだったが、次第に深くなっていく。息苦しくなってマトリフは逃げるように身を捩った。しかしガンガディアはマトリフを離さず、より深く唇を重ねてくる。舌同士が擦れ合う感覚に、次第に思考がぼやけていった。
    「……ん……」
     吐息交じりの声がマトリフから漏れると、ガンガディアは満足したように身を離そうとする。それを引き留めるように、マトリフは手を伸ばした。ガンガディアのうなじを捉えると、強引に引き寄せる。
    「……っ!」
     主導権を奪ったマトリフがガンガディアの口内をかき乱していく。奪い合うように口付けを重ねれば、溢れた唾液がマトリフの口の端から流れていった。
    「続き、しねえのか?」
     マトリフがガンガディアの耳元で囁く。ガンガディアの目が情欲の色を帯びたのがマトリフにははっきりと見えた。
    「……君が望むなら」
    「おめえ次第だぜ? オレはここで終わっても構わねえが」
     わざとらしく離れようとすると、ガンガディアは慌ててマトリフを抱き寄せた。
    「ベッドまで運ぼう」
     マトリフはガンガディアに抱かれて運ばれながら、ソファのそばに置かれた眼鏡を見る。
     キスをする前に眼鏡を外すその瞬間が好きだとは、まだ教えてやらない。




    キスの日(別バージョン)



     静かな部屋にときおりページを捲る音がする。マトリフはソファで本を読んでおり、ガンガディアはその隣に座っていた。
     ガンガディアはマトリフの様子を伺いながら、やはり今夜はやめておこうと思った。マトリフは本を熟読しているようで、先ほどからページを捲る手が遅い。マトリフは邪魔をされるのを嫌うし、邪魔されれば素気なく離れていってしまう。
     ガンガディアは眼鏡を外してサイドボードに置いた。目元を揉んでから、ついでに眼鏡を拭いておこうと眼鏡拭きを手にする。ガラスを拭きながら、先に寝てしまおうかと時計を見た。
     するとマトリフの視線を感じた。なんだろうかとマトリフを見ると、さっと視線を逸らされてしまう。不思議に思っていると、マトリフの頬が赤くなっていくのが見えた。
    「どうした?」
     手を伸ばして赤い頬に触れる。体調を悪くしたのかと思ったが、マトリフはこちらを向いて目を閉じた。
    「……するんなら、さっさとしろよ」
     マトリフはきつく目を閉じて耳まで赤くしている。それは正しくキスを待つ姿勢であった。
     ガンガディアはよくわからなかったがマトリフにキスをする。軽く触れただけで離れたら、マトリフは目を開けて不満そうにガンガディアを見た。
    「おめえよ、キスするときは眼鏡を外すな」
    「どうしてかね? 君が邪魔だから外せと言ったのに」
     それは付き合いたての頃、マトリフからガンガディアに言ったことだった。キスのときに眼鏡が当たるのが煩わしいらしい。それからガンガディアはキスをする際は事前に眼鏡を外していた。
    「おめえが眼鏡を外すと、これからキスされるんだって思って落ち着かねえ」
     マトリフはガンガディアから視線を外して言った。その頬がまだ赤い。どうやらマトリフはガンガディアが眼鏡を外したからキスをすると思ったのだろう。
     キスひとつで照れるなんて普段のマトリフの様子からは想像もつかない。しかしマトリフは意外にも色恋について初心な反応を見せる。ガンガディアがその意外な一面を知ったのは、マトリフと恋人になってからだった。
    「これから、それ以上のことをしても構わないかな?」
     身を寄せて言えば、マトリフは明らかに狼狽えた。
    「は? なに言ってんだよ」
    「君があんまり可愛い姿を見せるから」
    「バカ言ってんじゃねえよ。眼鏡かけてねえのに見えるかよ」
     ガンガディアはサイドボードに置いてあった眼鏡に手を伸ばすと、マトリフの希望通りに装着した。クリアになった視界にマトリフが映る。
    「確かに、このほうが可愛い君がよく見える」
     ガンガディアはマトリフをソファの隅に追い詰めた。マトリフは観念したように大人しくしているが、逃げないところを見ると彼自身もこの展開を望んでいたのだろう。
     ガンガディアはマトリフに唇を重ねた。今度は少し長く口付ける。舌先で舐めるようにすれば、マトリフの口から吐息が漏れた。マトリフも積極的に舌を絡めてくる。角度を変え深く口付けるとマトリフの身体から力が抜けていった。
     ガンガディアはそっと顔を離す。マトリフは潤んだ瞳で見上げてきた。そんな表情を見せられると止まらなくなってしまう。ガンガディアは一度深く呼吸をして自分を律すると、マトリフを抱き寄せて額を合わせた。
    「今夜は抱いても構わないか?」
    「……オレがなんて答えるかわかってんだろ」
     マトリフは小さく答えてガンガディアの首筋に顔を埋めてくる。
    「君の言葉で聞きたい」
    「嫌だね」
     マトリフは恥ずかしいのかガンガディアに頭を押し付けてくる。その様子がまた可愛くて、ガンガディアは微笑むと腕の中の温もりを大切に抱きかかえた。


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