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    秀二🐻‍❄️

    ヘキの墓場🪦
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    モス!モル!
    ぷいに鬼軍曹教官出ないかなという妄想ばかりしていたぷいの民です。

    MUN MUN コイツキ ドライビングスクール現代かつモル車がいる世界線を生きる鯉月。

    ・モル車のことを「教習生」、働くモル車のことを「アシスタント」、免許取得のために通う人を「学生」呼びます
    ・オリジナルモル車が出ます
    ・本家登場人物、モル車が存在しています
    ・モル車やスクールに関する凡ゆる捏造が含まれます

     在学中にモル免許を取ることは一般的だ。社会人になってからドライビングスクールに通うこともできるが、学生のうちであれば時間の融通も利きやすい。夏休み期間であれば尚のこと。同級生と同じように、鯉登音之進もこの夏から市内のドライビングスクールに通い始めた。

    街を見下ろすことが出来る小高い山にドライビングスクールはある。教習は厳しめとの噂だが、概ね評価は高い。
     このスクールでは免許を取得するためのコースを設けているが、公道デビューを目指す教習生の育成も行なっている。また、公道デビュー後に何かしらの理由で免許停止になった場合の再教育にも熱心だ。
     そんな教習生たちを見て鯉登は目を細める。共に頑張ろうではないか!と。鯉登音之進は可愛いものが大好きなので、健気に頑張る教習生たちの姿は色々な意味でぐっときた。ぷい。





    「鯉登さん、教習生たちにやたらとおやつをあげないでください」

     飴と鞭の使い分けで評判の月島教官は渋い顔で鯉登をたしなめた。鯉登の手にはレタス袋と大きなニンジンが握られている。

    「一生懸命でかわいいではないか。労いだ」
    「食事はこちらで用意していますので。満腹になったら給食が食べられないでしょう」
    「生の野菜が好きな者も多いだろう?」
    「ここは学校ですから、給食なんです。食材の保管などを考慮すると生野菜は難しいですが……しっかりと栄養補給や疲労回復できるよう献立が考えられています」

     とはいえ一部の教習生はスープのような粥のようなそれを中々食べなれない。月島教官は真面目さと教習生たちへの愛ゆえにしばしば暴走する同僚を思い浮かべた。根はいい奴なのだと。その男が作る給食はなかなかに不評だ。勿論、喜んで食べる者も一部いるが……。

    「さくさく」
    「ちょっと、鯉登さん何してるんですか」
    「私も腹が減ったからな」

     鯉登は爽やかな顔で巨大ニンジンを齧った。教習生たちが目を輝かせてよだれを垂らす。

    「……食事は休憩所でお願いします」

     規律には厳しい月島教官であった。





    「鯉登さん、この前惜しかったところが完璧にこなせていますね」
    「当然だ。ニシキ、今日もありがとう」
    「ぷっぷい!」

     ニシキは教習生だが、その勤勉さと優秀さから手が足りない時はアシスタントとして学生を乗せている。

    「ニシキとは2回目ですよね。以前は他のアシスタントだったかと。いつの間にそんなに打ち解けたのですか」
    「空き時間に少しな。ここのアシスタントは全員優秀だがどういった性格か、どのような考えで走っているのか知るのは大切だろう」
    「ええ、信頼関係を築くのは大切です」
    「私だけでなく、周りの全ての命にかかわることなのだから半端な状態や気持ちでは臨みたくない」
    「……その通りです。もしかして全てのアシスタントとそういった時間を?」
    「あぁ」

     今や人間でなくとも、スマートフォンを利用する。スタンプを押し感情を表現する程度ではあるが、モル車のコミュニケーションツールでもある。鯉登は楽しそうにアシスタントや他の教習生たちとのやり取りを見せた。

    「うふふ、可愛いな」
    「えぇ。……本当に、貴方はすごい人だ」
    「月島?」

     月島は遠くを見つめる。

    「私も貴方のように振る舞えたらいいのですが」

     信頼を多く得ている月島にも思うところはあるのだろう。

    「ぷいぃ…!きゅうう…」

     コースの脇で会話していたふたりを見て、みーが近づいてきた。会話が聞こえていたのだろう。みーは突然ぷるぷると悲しそうに鳴いた。

    「みー、どうした」

     みーは感受性豊かだ。このように悲しそうにする時はそれなりの理由がある。ネコでも現れたのかと月島は辺りを見回す。特に変わった様子はなく、首を傾げた。

    「特に何もないようだが……どこか調子が悪いのか?」
    「ぷい……ぷいぃ……」

     つぶらな目からぽとりと涙がこぼれる。

    「みーはそんなことないと言いたいんだろう」
    「そんなこと?」
    「お前は立派にやっている。皆お前を信頼しているのだから、もっと自分を誇れ」
    「ぷい、ぷい……」

     みーがこくりと頭を縦に振った。

    「……ありがとうございます。みーも心配かけてすまなかったな」
    「ぷいっ」

     みーは月島の手に頭を擦り寄せると、元気に鳴きコースへ戻っていった。
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