明け方、ココア、弱い私。 自分は決して弱くはないと、あの瞬間まではそう思っていた。
天与呪縛のフィジカルギフテッド。本家にいた頃は「躯倶留隊」程度の男となら一対一どころか多対一でも圧勝していたし、術式を有してさえいれば「灯」に所属する事だって余裕だっただろう。高専に入学してからも同期との組手ではいつだって真希が勝利をおさめていたし、二級相当の呪霊だって呪具さえあれば祓える力は間違いなくあった。
だからこそ驕っていたのだろうと、今ならひどく解る。
「クソッ……!」
月はとっくに傾き始めているが、真希は呪具を握る手を緩めることはしなかった。布団に入っても脳裏に蘇るのはあの日――夏油と対峙したときのこと。四人しかいない特級の一角、五条悟と並んで最強と謳われたその男は、たった一瞬で真希を敗北に追い込んだ。腹部を抉られ、足を砕かれ――痛みを実感するよりも先に意識を失ったことは記憶に新しい。何せたった一か月前の話なのだ。
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