カチリ。
無機質な音を立てボールが動きを止める。
ボールの持ち主、ミュウツーはそれが完全に収められたのを見守ってからそれを手に取った。
傷物を扱うようにそっとボールを撫でる。両手で優しく包み込み、胸元へ押し当てる。
そうすれば、器から彼の命の暖かみを感じられる気がした。
夢に向かって当てのない旅に出ては、各地のポケモンたちを導いていく。そんな彼に惹かれるようになったのはいつだっただろうか。
彼のそばにいたいと思うようになったのはいつだっただろうか。
彼の命の灯火が消えてしまうことが怖くなったのはいつだっただろうか。
無機質な空間に一人で閉じ込められるのは寂しいだろうと、彼の相棒である小さな電気鼠も共に収めた。あのポケモンもまた彼を作り出す重要なパーツなのだから失うわけにはいかない。
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