きみにチュウ とうとう懐いた。
膝上の暖かさと、じんと胸にこみあげる感慨を噛み締めて、ヴァッシュは後部座席でこっそり満面の笑みを浮かべていた。
──二つの太陽が輝く青空の下、変わり映えのない砂漠をひた走る社用車の中は静かだった。今朝方スタンドで車のエネルギーチャージを済ませて休憩を取ってから、車はずっと走り続けている。そうなると会話のネタも尽きてきて、ロベルトなどはつまらなそうに新聞を読み、メリルは無表情に前方を見るばかりになる。ラジオは宗教番組がごく小さな音量で流れているが、誰も耳を傾けてはいない。
要するに容赦なく退屈な時間だった。車での移動はそうした時間が大半と言っていい。けれど、そんな中でもヴァッシュはひとつ、ジオプラントの植物がゆっくり育つかのごとき楽しみを持っていた。
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