催眠術と降志宮野志保は催眠術など信じていなかった。
それは酔った戯れにやったこと。
正直効果など期待していなかったのに。
目の前で服を脱ぎ始めている恋人、降谷零の姿に、まさか、という気分になる。
二人でワインを飲みながら見ていたテレビでやっていた簡易的な催眠術の方法。
お互いに笑いながら、やってみようか、なんて。
***
「手を叩いたら、降谷さんは私の言うことをなんでも聞くようになるの」
テレビでやっていた手順を終え、最後の一言。
じっと彼の青い瞳を見つめながら、ぱちん、と手を打った。
かかった感じはしないな、と苦笑する降谷に対して、志保は試しに言ってみる。
「あなたは、これから語尾に必ず『ニャ』をつけて喋らないといけません」
ぶは、と降谷が吹き出す。
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