狂気ノ片鱗―もう登山なんかやめてよ!
大丈夫だって。あれは僕のちょっとした不注意だから…明日からは予定通り、××に登るよ。
――っ…!そんなこと言って!!本当に…死んじゃったら…!!どうすんの…?!
だから大丈夫だよ。心配してくれてありがとう。
―……帰ってきてよ、睦月…!!絶対だからね…!
ごめん、泣かないで、ごめんね…
「!!!!!」
また、同じ夢を見た。
「ごめん、僕絶対帰るから。君のとこに」
枕元には、昨日届いた封筒が変わらず置いてある。
『第二次狂気山脈登山隊 採用通知』
封筒には、そう印字してあった。
1. 出会い
「皆、集まってくれてありがとう」
立ち上がったのは、最も老齢の男だった。老齢とは言っても、ウェアを着ている上からでもがっちりとした筋肉が見て取れる。耳障りの良い、落ち着いた声だ。
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