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    nekota

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    基本的にseed(ムウマリュ)のらくがきばかりです

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    nekota

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    『circle of life』の小説ver
    こちらはタイトルが『螺旋の絆』になってます

    螺旋の絆 ムウが目が覚めたら、そこは見知らぬ場所
     よくあることだ、そのうちはっきりするだろう
    なんて、あまり気にしない性格
     だが、
     少し前にも似たようなところに来たような
     
     見渡す限りの彩度の低い、ぼやけた平原
     どこまで続くのかわからないほどの広く澄んだ空
     青い蒼い空
     
     遠くまで飛んでいったらさぞ気持ちが良さそうな
     空

     飛行機乗りには憧れてやまない
     永遠の空

     それを見上げて、しばし呆けていると
     
    「もう、ここにきたのか、少し早すぎないか」
     どこかで見知った、とても嫌な声が耳に届いてきた
     
    「!!!」
     
    「どうした、とぼけたツラをして、まあ、あまりお互い見たくもない顔だろうが、な」
    「ラウ、か?」

     仮面はなく、いっとき目の端の納めた、妙に老けた外観でもない。それなりの年齢の親父によく似た顔がそこにあった。

    「あ……お前がいるってことは、ここは、アレか」
    「そうだ、よくわかったな」
    「なんとなく、前にもきたような」
     少し前の過去を思い出した
     
     あ、ってことは、俺またやっちまったか??
     
     今度こそ側にいるって、決めたのに…
     
    (悪りぃ…マリュ…)
     ガックリと肩を落とし、膝から崩れ落ちそうになるムウに
    淡々とラウはさして気にかけることなく
    むしろ助け舟でも雑に投げるように呟いた
    「残念ながら、お前はまだこっち側じゃない」
    「??」
    「不本意だが、お前に逢いたいって奴がいてな、私が案内役に来ただけだ」
    「お前が?」
    「仕方なかろう」
     ものすごく嫌そうな顔で、ラウが俺を見ている
     それもそうか
     互いに、直接命のやりとりをして、憎しみあって
     最後に面したのが、戦争中って間柄だ
     ものすごく近い結びつきの因縁の上に、さらに個人的な感情を積み重ねていた二人
     
     だが、ここにいると
     そんな心の重荷などどこになく、無くなっていた
     憎まれ口を、口癖のように呟きながらも
     その向こう側に、なぜか奇妙な親愛さえ感じ取れる
     
     この心に今残っているのは
     寂寞とした旅情にも似た、はるか彼方からの思い出のような
     不思議な感傷だった
     
     しばらくすると、ラウの向こうから、ひとりの人影が現れる
     
     ラウをもっと若年にした感じの、線の細い、それでいて、とても凛とし目鼻立ちの少年…
     歳のころは出会ったころのキラたちみたいだった
     
    「素顔でお会いするのは初めてですよね、ネオ・ロアノーク」
     ネオと呼ばれて、ちょっと訝しんだ
     その名で俺を呼ぶってことは…?
    「君が、白い坊主君、か!」
     あの後、アスランやシンから彼の話は聞いていたのだが 
    「おかしな名前で呼ばないでください」
     呆れるような眉を下げて、淡々と返答された。
     ラウト並んでいると、兄弟、それ以上に瓜二つだ。
     当たり前か…
     その元を正せば、同じ人物なのだから
     キラからその辺の事情もすでに聞いていた

     元を正せば、たった一人の男の野望の果ての、傷跡

     だが、彼らとて、一人の人間だ
     この世に生まれ出でた
     純粋なる命の火だ

    「ここに呼んだのは、俺でもないんですよ」
    そういうと、レイの後ろに隠れていた子供が顔を出す。
     ちょこんと恥ずかしそうに、でも
     どことなくにこやかに

    「こ、こんにちは」
    「…やあ」
     気恥ずかしそうな声につられて返した言葉が、こちらもちょっと戸惑って裏返ってしまった。
    「えっと…?」
     見覚えのあるような、ないような
     レイよりももっと若く、少年?と言うよりも子供に近い男の子だ。
     だが、その瞳はしっかりとしていて、とても凛々しい
    あどけなさは残っているが、澄んだ青い瞳をしている。
     誰だっけ??この子?
     ぐるぐると今までの出会いを思い描いていると
    「その、僕が、会いたかったんです。初めまして、ムウさん」
     少年はゆっくりとレイの横から自分の方に足を運んで、近づいてきた。
     そのまま、ぼーっと見下ろしていると
     ニコッと笑って
    「僕もそこまで、背が伸びたんですかね?生きてたら」
    「へ?」
     生きてたら…
     そうあっさりいうところがここの世界の常識なんだろう
     
     そうここは、彼岸の手前
     
    「さてな、俺よりでかくなることだってあり得たんじゃないか?」
     この少年が誰か思い出せなかったが、なぜか安心する
     その青い瞳が
     どこか懐かしい
     彼の目線になるように、しゃがんで、ふわっとした金髪をぐしゃっと撫でた。
    愛おしむように、揶揄うように
     
     
    「貴方の姿を一度拝見してみたかったんですよ。エンデュミオンの鷹と呼ばれた、英雄の姿を」
    「見てがっかりしたか?こんな適当な男だぞ」
     ゆっくりと首を横に振って
    「いいえ、想像していた通りの人でした。鷹と呼ばれるの納得です。自由で広い空がよく似合う」
    「そんな大層なもんでもないぞ、ただのどうしようもない男だぜ、俺」
     照れ隠しにこめかみを掻きながら、ムウは笑い返す。
     
    なんだろう
    男の子交わす会話がむず痒い
    でも、嫌な気持ちはひとかけらもしない
    むしろ、とても穏やかな気持ちになって、楽しい。
     
    「本当は、もっとゆっくりお話ししたいのですが、あなたを呼び戻す、力はとても強くて、僕なんかじゃ引き留めて置けないんです」
     寂しそうに少年は微笑んで、空の彼方を眺める
    「大天使の加護がついた女神様には勝てそうにありませんから」
     
    「現に、我々も勝てなかったな」
    「……」
     レイがゆっくりと瞳を閉じて懐かしい艦を思い出しているのか、はたまた人物をなのか…
     ラウはすでに世捨て人のように悟り切った諦めモードで、嫌味を込めて鼻で笑う
    「と、いうことだ、残念だが、貴様と会うのはまだ当分先、ということで、それまではここで我々は、しばらく有意義に寛いでおくさ」
    「退屈は最上の幸福、か。まぁ、いいんじゃねーの」
     
     世の中は、結局のところ変わらなない
     人は、そう簡単には進化はできない
     でも、少しづつは変わっていける
     幾千幾万もの命を散らし
     それでも続いていく人類の血
       
     俺がここにくる時は、もう少し色んな手土産話しを持ってくるさ…
     
     各々自分を見送る宿敵、青年、少年
     彼らの姿や輪郭は朧げなくなって、霞んでくる
     それと同時に、
     かすかに消えようとする己の意識の中
     遠くから女の声が俺を呼ぶ
     
     とても暖かく、耳馴染んだ、綺麗な声
     俺が一番聞きたい、愛しい声
     
     その声に引っ張られるように、遠のいていく意識の中
     目の前で、こちらに向かって、にっこりと晴れやかに笑うあの少年
     空のように澄んだ蒼瞳が輝いている
     
    「さようなら、…また、いつか」

     穏やかな微笑みのまま手を振りながら、遠ざかっていく人影
     そう
     多分

     出会えるかもしれなな
     
     今度は、一番近いところで
     
     俺によく似た、
     俺の…
     
     
     次に
     目が覚めたて、意識を戻した時
     一番最初に、視界に飛び込んできたのは
     目一杯の涙を溜め、心配そうに揺れる褐色の瞳
     
     ああ、ちょっと前にもこれ、似たようなの経験したな
     
     などと、ぼんやり思っていると
    「ムウ、ムウ」
     必死になって叫んでる声に、意識が覚醒した
    「あ、えっと、…ここあれ??え??」
    「馬鹿馬鹿馬鹿馬鹿!!!あなた訓練中に落ちたのよ!!!」
     あ、……あぁ

     なんとなく、意識を取り戻して、自分の状況を思い出した。 
     洋上訓練で、沖に出て、新人がミスったのをカバーしようとして、助けに入って俺まで、ドボンって
     
     そうだった

     海に落ちたまでは覚えてたんだけど
     
    「すぐに救助されたんだけど、全然意識戻らなくて、めちゃくちゃ心配したんだから」
     目元を真っ赤に腫らした妻を抱き寄せて、その鼓動を互いに交わす。
     生きているって、証拠
     暖かな温もり
    「ごめん」
    「もう、どこにも行かないって、言ったでしょ」
    「ごめん、ほんとっ、ごめん」


     
     
    「どうせ、ここで交わした会話など、あちらに戻れば覚えてないのに、なぜに」
    レイは、いまだ少し寂しげに男が去った後を眺めたままの少年に声をかけた
    「それでも、会ってみたかたんですよ、僕は」
    「生まれ変われば、また会えるのに」
    「その時には、もう僕の記憶はないでしょう。だから、今、この時に、プレア・レヴェリーとして彼に会ってみたかったんです。あちらでは会えませんでしたからね」
    「そうか」
    「私は二度と、あの世界はごめんだな」
    ラウはほとんど世捨て人の吐き台詞のように、軽い嘲笑をこぼしながらその場に背を向けた。

    「僕にはもう一度会いたい人がいるから、少し待っててもらいたいって。だから、彼にお願いするしかない、って」
    「その時は、父親、か」
    「だと、嬉しいですけどね」
     
    プレアはムウと握手を交わした手のひらをもう一度握りしめて
    遥か彼方を見上げた。

    「ねえ、カナード。生まれ変わって君に会えたら、どんな話をしようか?」



    人は一人では生きてはいけない
    誰かの手をとり、誰かと手を繋ぎ、共に歩んでいく
    繋いだ手から手へ
    思いは紡がれていく
    人の思い、人の心、人の気持ち

    親から子へ、子から孫へ、孫からまたその子へと
    受け継がれる命の流れ、血の調べ
    導かれ、導いて、結んで、紡いで

    それは魂の糸車

    永遠に続く
    螺旋の絆

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