可愛いままで『可愛いままで』
「炭治郎が一緒に風呂に入ってくれない」
深刻に呟いた義勇の台詞に返ってきたのは、酔っぱらい達の爆笑であった。
「うひゃひゃひゃひゃ嫌われてやんのうひゃひゃひゃ」
「ざまァ!ざまァ!ぶはははは」
それらを無視して義勇は続ける。義勇とて、彼ら同様に酔っぱらいなのだ。
「暮らしを共にするようになってからずっと、一緒に風呂に入っていたのに。それに、風呂だけじゃない。寝室も別にしてほしいと言われた。その時の俺の気持ちがわかるか」
宇髄と不死川は畳をバンバンと叩いての大爆笑である。俺はこんなにつらいのにお前たちは……と目を据わらせて義勇は杯を呷る。
元柱三人、なんとはなしに定期的に集まっては、特に目的もなく開かれる飲みの席である。以前の自分達であれば、こんな集まりを持つなど考えもしなかったが、無惨が滅んだあの夜明けからこちら、互いの関係も少し変わってきている。何より、酔うまで飲むなどという事、以前であればする筈もなかった。
2568