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    タピEpisode1でヴィルアズ
    エースに嫉妬するヴィル

    #ヴィルアズ
    viruaz.

    詐欺師並に巧み「なんであの2人を選んだの?」

     ポムフィオーレ寮。その寮長であるヴィルは目の前にいる恋人にスキンケアを施しながら訊ねた。化粧水を含んだコットンが風呂上がりの肌に潤いを与えていく。元から綺麗な肌をつやつやに輝かせながら、アズールは特に表情も変えずに答えた。
    「何かご不満でも?」
    「別に。ただ気になっただけ」
     こっちが訊いてるのよ、という言葉をなんとか飲み込んだ。


     今日は大変な1日だった。どこから漏れたのか知らないがヴィルが映画祭に同行させる穴埋めを探していることが噂になり、学園の中庭で大勢に囲まれた。もちろん、その中に恋人であるアズールもいた。
     噂が広まらなければ彼を誘うつもりであったがこうも騒ぎになった上でヴィルが個人を指名すれば後ろ指をさされかねない。
    (まぁ、あの子ならきっと何とかするでしょ)
     半ば放棄に近い思考に陥ったヴィルが選んだ手段は傍観だった。

    「闘って、勝ち取りなさい」

     この発言で中庭の騒ぎは更に大きくなった。今にも力ずくの大喧嘩が始まりそうなときに声を上げたのはアズールであった。
    「ここは穏便に運で勝負してはいかがでしょう?」
     そこからの流れは非常にスムーズだった。アズールのすぐ傍にいたジャミルが賛同すれば「スカラビア副寮長が言うなら有りかもしれない」と皆納得し始め、「俺トランプ持ってるんでそれ皆で引いて決めましょう!」とエースが出てきて皆1枚ずつカードを手に取る。
     そして結果はアズール、ジャミル、エース、グリム、監督生が選ばれた。

     単純な生徒は「運がなかった」と騙されたが、分かる者が見ればカードを引く前に少なくとも3人が選ばれるのは明白だった。


    「ジャミルさんは同じクラスでお互いよく知ってますし、エースさんは手先が器用ですからね。あの相談する時間もない場では自分で考えて動ける人が必要でしたがお二人はそれができる。」
    「ジャミルは納得できるけど、1年のエースを選んだのが不思議なのよ。くじの細工くらいだったらアンタでもできるでしょうし、手先の器用さならラギーもいたじゃない」
     得意気に話すアズールに更に突っ込む。あの場にいたメンツなら他でもやりようがあったはずだ。
    「そうですが…僕がくじを出せば怪しむ方も居たでしょうし、イカサマに関してはエースさんが1番ですよ。それに…」
    「それに?」
     嫌な予感がする。ヴィルの気持ちを知ってか知らずか、アズールは躊躇うことなく言葉を続けた。
    「エースさんはそれなりに僕に懐いてくださっているようなので、たまには僕からも応えてあげようかと思いまして」

     心臓が掴まれたように痛い。瞬時にある記憶が鮮明に蘇る。エースの誕生日にお祝いのパイを携えてインタビューしたときのことだ。
     「兄弟にするなら誰がいいか」という質問でエースは「アズール」の名を出した。それだけならまだいいが、散々アズールを自分に都合の良い存在と解釈した発言をし、挙句の果てには財布扱い。自分の恋人が他人から財布として見られるのは当然いい気はしないし、相手が他人の努力に乗っかろうとする甘ったれのエースならば尚更腹が立った。
     ひとまずその時の苛立ちはエースへのパイ投げに怒りを込めて抑えたが、運の悪いことにその年のアズールへのバースデーインタビュアーはエースだった。後から聞けば、エースはアズール本人に対しても自分を弟にどうかと売り込んだというではないか。
     アズールがエースになびくことはないと思っているがあまり油断はできない。そう考えていた矢先にこれだ。

    「アイツはアンタのこと都合良く利用したいだけよ」
    「それは僕も同じですよ。おかげで僕は美粧の街に行けるんですし」
     忠告をしてもアズールは気にすることもなく答えた。自分の方がまだ上手だと信じて疑わない様子だ。たかが1年生、されど1年生。アズールのような人間は相手を見下し、自信満々でいるときが一番危ないというのに。
     スキンケアを一通り終え、出来上がった肌の弾力を味わうため優しく頬を撫でているとアズールはその手をとって手のひらへと唇を寄せた。
    「やけにエースさんへの当たりが厳しいですね」
    「子ジャガがあの街でやっていけるのかが不安なの」
    「今回はグリムさんや監督生さんもいますし大丈夫でしょう」
     クスクスと笑いを零す唇が手首まで降りてくる。やらしい笑みを浮かべるスカイブルーの瞳にはうっすらと熱が感じられる。
    「今日はすぐ寝るんじゃなかったの?」
     手を振り払うことはせず、されるがままに訊ねる。今日はただ映画祭や美粧の街について詳細を聞くためにアズールがヴィルの部屋へと訪れただけだったのだ。

    「あぁ、そうですね。ヴィルさんが僕の気持ちを疑っているような気がして不安になってしまいまして」
     今度は頬にキスをされ、手は恋人繋ぎにされる。本当によく回る口だ。不安なんて微塵も感じていないくせに。
    「これだけ寝る前にエースさんの話をしてしまうと夢にまで彼が出てきそうで…ヴィルさんで上書きしたいところなんですが仕方ありませんね……んっ」
     べらべらと紡がれる煽りをキスで遮った。舌で唇を開かせ、人魚独特のひんやりした口内を苛立ちを発散させるように荒らす。口を塞いだまま、すぐ後ろにあるベッドへとアズールを誘導し、押し倒した。

    「…っはぁ、寝なくていいんですか?」
    「白々しい。寝る気なんてさらさら無いくせにまだそんなこと聞くわけ?」
    「ふふ…僕としてはどちらでも構わないんですけどね」

     あくまでヴィルから行為を始めたことにしたいらしい。一体いつからその気にさせるつもりでいたのだろうか。本当に人を嵌める技術は一級品だ。
     明日は映画祭用の衣装をリュクスにオーダーしないといけないが、アズールのプロフィールには「詐欺師」と書いてしまおう。リュクスのデザイナーはそのプロフィールを見て一体どんな衣装を仕立ててくるだろうか。
     美粧の街に着いたらアズールを父であるエリックと会わせるつもりでもあるが、これも黙っておこう。想定外の事態に弱いアズールのことだ。きっと面白い反応をしてくれる。

    「考えごとですか?」
    「何でもないわ。今日はどうやって啼かせてあげようかと思っただけ」
    「おや、怖いですね」

     その余裕な顔を美粧の街では驚きの連続で崩してあげる。アタシの睡眠時間を急に奪う罪は重いのよ、と心の中で呟きながらヴィルはアズールの肌に触れたのだった。

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