『はじめてのキスはレモンの味』
「なんだそれ?」
「なんだって、なにがだべ?」
「今歌ってたやつ」
朝から昼にかけての農作業を終えた孫夫婦は本日自宅で昼食を採った。
食事を終えての洗い物を上機嫌でしていたチチはそのまま夕食に使う市場には卸せなかった野菜を洗っていてのだが、意識せず口ずさんでいた「歌」に悟空が反応したようだ。
近付いてくる夫は空腹を満たした後に風呂に入るようにチチが言ったため、湯上りの軽装でふわりと石鹸の香りがする。
シンクの中に置いた金属桶の中で野菜を洗う手は止めずにいると、背後にぴとりと夫がくっついてきたので、ふたりは自然と触れ合わせる。
「んで? やっぱちゅーでレモンの味なんてしねぇぞ?」
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