食われるかと思った。
マトリフの前で跪きうやうやしく左手を掬い取ったガンガディアがおもむろに口を開いて指に食らいついたのだ。
ぎょっ、としたマトリフは次いで感じた痛みに反射的に声を上げて顔を顰める。
「いってえよ! なにすんだ!」
突然指を噛まれたのだ。文句も言いたくなるというもの。食い込む歯の感触が消えたことを見計らって掴まれた手を取り戻そうとマトリフは手を引き戻す。
しかしガンガディアの口は離れたが手は掴まれたまま。見ればマトリフの左手の薬指の付け根から血が滲んでいる。それをガンガディアは舌を這わせて舐め取った。
「んっ……」
まるで情事の時のようなねっとりとした舌使いにマトリフの左手が痛みのせいだけでなく震えた。
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