憧れ 眠れないからと飲んだ酒が底をついた。空になった瓶がいくつか床に転がっている。その割には酔うことすらできないでいた。
外は酷い雨が降っている。岩戸を閉めていてもその音が洞窟内に響いていた。マトリフはベッドに寝転がりながら空の酒瓶を手で弄ぶ。夜も遅いが、一向に眠気が訪れなかった。
「大魔道士」
ガンガディアが部屋の前に立っていた。咎めるような眼差しに一瞬煙たく思ったが、マトリフは誘うように手招いた。ガンガディアは空瓶を拾いながらマトリフの側まで来る。ガンガディアの小言がはじまる前にマトリフは言った。
「オレにラリホーかけてくれよ。眠れねえんだ」
甘ったるくねだったが、ガンガディアの表情は動かなかった。
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