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    mic_tamanegi

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    mic_tamanegi

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    クレーンゲームする和解済み復縁後サマイチ

    俺たちのぬい「あ、左馬刻待って。ちょっと寄りたい。」
    「あ?……ゲーセン?」
    「うわ!これが噂の!やっと見つけた!」

    可愛い可愛い可愛いかわいい。

    クソみてえな思惑に踊らされ拗れた俺と一郎の関係は、殴り合いと下手くそな会話と時間によって和解という方向へ進んだ。
    そしてこの前、ようやく、遂に、秘めていた想いが実り、一郎と恋人同士になる事ができた。
    何より俺のモンになった一郎は一段と最高最強に可愛い。可愛過ぎて心臓とちんこが痛い。今も痛い。
    だが一郎の体の負担を考え、抱いたのは最初の一回きり。焦る必要はねえ。一郎ファースト。俺様紳士。

    今日はハマにある肉屋に誘った。2人で楽しく飯を食い、腹一杯になったところで店を出て、迎えの車は待機させ少し散歩していた。すると一郎が賑やかな照明の店の外に置かれたクレーンゲームを指差した。
    コーラしか飲んでねえのにニコニコご機嫌なその姿はさながら天使。世界よ見やがれ。俺様の恋人、天使だぞ。

    「左馬刻!見ろよ!」
    「……これ俺様か?」
    「そう!可愛いだろ?ディビジョン代表メンバーのぬいぐるみが出たんだよ!計画段階で連絡来ただろ?」
    「あー…めんどくせえから銃兎に任せてたわ…」

    ガラス箱の中にはどっかで見た事あるような面構えが無造作に並べられ、そこには俺の特徴を捉えた不機嫌そうなぬいぐるみが紛れていた。
    それを見て目を輝かせる一郎。
    可愛いのはお前だわクソが!!

    「…俺ずっと左馬刻のぬい欲しかったんだよなぁ。でもどこ行っても左馬刻のは人気で見つけられなくて…って、あ…いや……」
    「そ…そうかよ…」
    「………ん」

    頬を染めて100円を2枚投入し、真剣に獲物を狙う一郎。
    マジかよなんだよ俺のぬいぐるみ欲しいって。殺す気かお前、可愛さで人間殺せるぞ。って、
    は!?待て待て待て。お前横からも覗き込むタイプかよクレーン見上げんじゃねえよ上目遣い…ぐあぁぁぁぁぁぁ!!
    やべえ。抱きたい。今日はマジで帰したくねえ。…付き合ってんだし、いいんじゃねえか?一郎ももしかしたら期待して…
    いや落ち着けがっつくな。よく考えたろ。ケツに異物挿れんだぞ。普通に考えてキツイだろ。鎮まれ俺の分身。勢いで抱くなんて絶対しねえぞ。
    次はホテルのスイート取って最高のロケーション用意するって決めてんだよ。

    「あ。」
    「っしゃー!ゲット!見ろよすっげえ可愛い!」
    「おお、いつの間に…すげえなお前…」

    俺が悶々としている間に、一郎は目当ての俺ぬいぐるみを取る事に成功していた。
    喜ぶ一郎とお約束のハグ。
    待ってましたと言わんばかりに思い切り抱き締めた。
    俺の肩に頬を擦り寄せ、嬉しいと呟く一郎。
    良かったな。ぬいぐるみも喜んでんじゃねえか?
    ふと、目線の先のガラス箱の中と目が合った。赤と緑の瞳、黒髪、赤い服。
    まさか。

    「なぁ、これお前か?」
    「ん?ああ、そう。へへっ、照れるわ!」

    3を倒したような口と生意気そうな吊り目。これはもう一郎の小せえ命じゃねえか。

    「取るわ。」
    「えっ。」
    「これがお前なら、俺のモンにしねえとな。」
    「左馬刻…」
    「一郎…」
    「お楽しみのところsorry」
    「んっで毎回居やがんだよテメェはよぉ!?」

    後ろから馴染みのあるよく通る声が割り込んできた。どっから沸いたテメエ消えろマジで邪魔だわクソが。

    「パトロールしてたらいい大人がゲーセン前で卑猥な雰囲気出してたから止めに来たんだよドマヌケ。」
    「ひっ卑猥って…俺たちまだ…一回しか」
    「はいSTOP STOP STOP。言わなくて結構。」

    銃兎のセクハラ発言で一郎は途端に顔を真っ赤にした。
    このクソポリ。初心な一郎を恥ずかしがらせやがって。変態かテメエ。

    「なんですか?クレーンゲーム?ああ。前に企画の話があった例の。」
    「そうなんすよ!見てください!左馬刻のぬい!取れました!」
    「へえ。で?今度は左馬刻が一郎くんのぬいぐるみを取る、と。」
    「うっせわりーかよほっとけ。」
    「いえいえ。仲良きことは微笑ましきかな。どうぞどうぞ。」
    「ちぃっ!」

    一郎の視線と銃兎の視線を浴び、ボタンを操作する。銃兎、いい加減消えろ気が散るんだよ。
    可愛い一郎のぬいぐるみはなかなかに良い場所に置かれてっから、あの辺掴むか引っ掛けるかすりゃ…

    「いけんじゃね?」
    「んー…」
    「あ!?あー…クソ」
    「多分、アーム弱いから頭の方掴んだ方が」
    「っし。もう一回。」

    万札を崩し、山になった100円玉を積んでクレーンの行く末を見守る。
    一郎の言う通りアームが弱い。持ち上がっては転がるを繰り返し、何度も店員が位置の調整に走ってきた。

    「クソが…」
    「俺取ろうか?」
    「俺が取らねえと意味ねえんだよ」
    「左馬刻……」
    「一郎……」
    「左馬刻、こういうの得意だろうが。」
    「ばっ!!黙ってろ銃兎!!」

    まだ居たんかよテメエ!!

    「えっ、そうなのか」
    「そうまでして一郎くんと一緒に居たかったって事ですか。
    全く初恋叶った中学生かお前は。」
    「うっせ黙れ殺すぞ。」

    余計な事言いやがって裏切りかぶっ殺すぞ。
    確かにクレーンゲームは合歓に強請られては挑戦してたから、まぁ慣れっつーのもあるけど得意な方だ。
    それに銃兎の言う通り…取ったら一郎をブクロに送らねえといけねえ。
    もう少し。あと少し。近くにいてえって思うのは当たり前で、でもンなカマくせえ事言えるわけねえし。銃兎に言われたけど。
    そろそろタイムリミットか。仕方ねえ。
    観念したようにようやく、俺はクレーンの操作に集中した。
    小さな一郎の脚に付けられたタグに、アームを引っ掛ける。

    「っしゃオラ!!見ろ一郎!!」
    「うん。ありがとな、左馬刻。」
    「あー…ワリ。遅くなったな。送るわ。今車呼ぶ」
    「今日は、左馬刻んちに泊まりたい。」
    「は」

    待てよ次は最高のロケーションって決めてんだよそんな急にお前の体の準備とか俺の心の準備とか

    「ダメか?」
    「任せろ。」

    すぐに迎えに来た舎弟の車に乗り、自宅を目指した。
    俺のぬいぐるみを大事そうに両手で包み、幸せそうに笑う一郎。
    そんなに嬉しいか。俺も、この一郎ぬいぐるみを大事にしねえとな。

    「左馬刻、一緒にぬい服作りしような」
    「ぬい、服?」

    帰りに立ち寄ったディスカウントショップで俺が夜のアレコレを両手いっぱい買っている間に、一郎は裁縫用の接着剤を買っていたらしく。
    布なんてねえ俺んちでしょんぼりする一郎の為に、ヴィンテージのアロハを何枚か切ったのは、愛があるから出来たこと。

    ちなみに徹夜で服作りしやがるから、夜のアレコレは次回に持ち越し。
    クソでけえため息を零す俺を、小さな一郎が笑って見ていた。
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