ふと、瞼が軽くなるのを感じ、何かに引っ張られるように意識が覚醒する。
オレンジの小さな光を頼りにベッドサイドの時計を見ると、深夜2時の表示。
(中途半端な時間に起きてしまった)
隣で静かに眠る左馬刻くんを起こさぬよう慎重に、時計の隣のペットボトルを取った。生ぬるい水が乾いた喉と身体を潤してくれる。
何気なく視線を落とすと、身体のあちこちに赤い痕が散らばっているのが見えた。とはいえいつもの服で隠れる範囲ではあるし、何より意識を失う前まで体液に塗れていたと記憶しているが、それが綺麗に拭われている。
左馬刻くんの優しさに、胸の奥がじわりと暖かくなる。
(夜が明けなければ、いいのに)
自然と浮かんできた思いに、自分でも少し驚いた。
TDDの頃は逆だったはずだ。年若い友人達や、何より彼に会えるのが楽しみで、年甲斐もなく、早く明日が来れば、と思ったものだ。
「随分、欲張りになってしまったね……君の影響、かな」
白い髪を少しだけ梳くと、さらりと指からこぼれる。その感触に満足しもう一度布団に潜り込んだ瞬間、ベッドがギシリと音を立てた。オレンジの光を背負って、白い髪の先がちらちらと瞬く。
「アンタは欲が無さすぎるんだから、丁度いいだろ」
「そうかもしれない、ね。それでは、左馬刻くんをもう少し、くれるかい」
瞼を閉じると唇に柔らかいものが降りてきた。胸の暖かさが熱に変わり、腹の底の欲を煽る。
明けない夜は無い。ならば、この時間を楽しむだけだ。