①杏千リレー小説<京都編・一日目・1>「……よしっ! できた!」
大学生になって初めての夏休みも、ついに明日で終わりを迎えるという、まだ残暑厳しい九月の初旬。
煉獄千寿郎は椅子から立ち上がってカレンダーを一瞥すると、ベッドの上へと盛大に身を投げ出した。外は今日も三十度を超えているというが、高台にある築三十年のこのアパートは、窓という窓を開け放てば風が吹き抜けてずいぶん涼しい。
ベッドの上で仰向けになっていると、集中して汗ばんだ身体を風がさらっていく。窓から見上げる空は、眩しいくらいの青だ。その青の中を、一匹のツクツクボウシがどこからか飛んできて、窓枠に止まると軽快な鳴き声を上げ始めた。
千寿郎はしばらく目を閉じて心地良い疲労感に浸っていたが、鳴り出したスマートフォンに、気怠げに腕を伸ばす。
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