「お二人とも、今日も仲がよろしいのね」
そう言ったのは、通りがかりの椿組のリリィだった。次いでごきげんようと挨拶する彼女は、神琳のクラスメイト。名前は……以前に一度、遠くから呼ばれているのを聞いただけだからすぐに思い出せない。
私と神琳は顔を見合わせる。視線が一瞬だけ交わって、先に彼女へ向き直ったのは神琳だった。
「雨嘉さんとはルームメイトですもの」
「一番仲のよろしいルームメイトは、お二人ではありませんか? よく話題にあがっていますよ」
「あら……そうなんですの? お褒めに預かり、光栄ですわ」
淀みなく話を進めていく神琳の隣で、私は曖昧な微笑みを浮かべた。顔しか知らない人に応対ができるほど、人付き合いは上手じゃない。悲しいけれど。
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