君の音 うぅ、怖いなあ。なんだろう。ムサシがいないと不安でいっぱいだ。
今日は俺だけサカキ様にお呼び出し。しかも、何故か場所は別荘だ。一体何の用事なのか、全く読めない。
使用人に案内されて、サカキ様のいる部屋に入る。
「来たか」
「は、はい。コジロウ、只今到着致しました」
サカキ様は、いつものスーツじゃない。私服だ。別荘だから当たり前か。
「コジロウ。お前の家は、ササキ財閥だったな」
「はい。俺の家が何か……」
「いや。お前の家に興味はない。用があるのはお前だ」
「はあ」
一瞬だけ、家にいた頃の嫌な記憶が思い出された。
「お前、ピアノは弾けるか?」
「ピアノ……ですか? 弾けますけど」
サカキ様は、にこりと笑った。
「そうか。それはよかった。この間までは女が弾いていたのだが、もう来ない。
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