「麻里ちゃーん！」
「絵梨佳ちゃん！」
絵梨佳ちゃんが見えてきて手を振る。鳥居の前で待ち合わせをして一緒に初詣に行こうと話してたのだ。
「麻里ちゃん、あけましておめでとう」
「あけましておめでとう！」
絵梨佳ちゃんにつられて挨拶を返す。
「ねぇねぇ、年末どうだった？」
「私の方は凛子と二人で過ごしたけど、途中で凛子が飲み過ぎて絶賛爆睡中」
「私の方は格闘技の番組の真似してお兄ちゃん気絶させちゃった」
「えっ大丈夫？」
「舎弟の人達に介抱されてたのは覚えてる」
気まずい空気が流れ、絵梨佳ちゃんは話題を変えてきた。
「そ、そうだ麻里ちゃん！お参りしよ！」
「そうだね」
私と絵梨佳ちゃんは鳥居をくぐると参拝客の列に並んで行った。列は意外と長くて時間が掛かりそうだったけど絵梨佳ちゃんと色々お話をしていると順番が回ってきた。お賽銭を入れて二人で鈴を鳴らすと、お祈りをする。
（お兄ちゃんが休んでくれますように）
（麻里ちゃんと・・・）
参拝を済ませた私達は絵梨佳ちゃんの提案で甘酒を貰いに行く事にした。
「あ～お二人さ～ん、ヒェック、仲、ヒェック、よろしいようで～」
「坂本さん！？」
屋台に向かうとそこには坂本さんがいた。相変わらず酔っぱらっている。
「あれ、お兄さんの舎弟だよね？」
「いや～屋台やろうってなって甘酒1杯50円よ、買ってく？」
「あ、じゃあ二つ」
「おー毎度あり、他のやつも屋台出してるからね」
坂本さんから甘酒を受け取り絵梨佳ちゃんと一緒に飲む。
「うーん、温まる～」
「甘いね」
「フランクフルトとアメリカンドッグあるよー！」
呼び込みをしている人に反応して屋台に向かうとそこには玉置さんがいた。屋台では小鳥遊さんが黙々とアメリカンドッグとフランクフルトを作っている。
「あっ！麻里ちゃん！」
「玉置さん、小鳥遊さん」
「あけましておめでとう、初詣？」
「うん」
「あ、食べてく？どっちとも150円だよ」
「ズカズカと行くな」
「ぐえっ」
玉置さんの首根っこを小鳥遊さんが掴む。
「ちょいとこの馬鹿が迷惑をかけたな」
「なんで玉置さんが呼び込みを？」
「接客はからっきしでな」
「おい、人を物みたいに」
「お前が調子乗るからだろ」
二人の掛け合いを見ていると絵梨佳ちゃんが私に袖を引っ張った。
「麻里ちゃん、そろそろ行こっか」
「そだね、絵梨佳ちゃんフランクフルト食べよ」
私達は小鳥遊さんの屋台をあとにする。
「麻里ちゃん、絵梨佳ちゃん、あけましておめでとう」
声のする方を見ると真知子さんが立っていた。
「ベビーカステラがあるんだけど買っていかない？」
「じゃあMサイズで」
「ふふっ、ありがとうね」
真知子さんがベビーカステラを一つ一つ紙袋にいれて渡してくれる。鳥居の前に戻りながら食べる事にした。
「ん～おいしい」
「優しい甘さだね」
そんな会話をしながら鳥居の前まで戻ると、お兄ちゃんが誰かと話していた。
「お兄ちゃん？」
「あ、麻里」
「暁人さんその顔どうしたんですか！？」
振り向いた兄の右頬に湿布が貼ってあり、鼻には絆創膏が貼ってある。
「ああこれ？麻里が大晦日にやってた格闘技番組の真似して蹴った」
「本当だったんだ・・・」
「今思えば羽目外しすぎたなって思ってる」
「で、この人は」
「ここの宮司」