ニュームーンニュームーン
いつだったかは、わすれちゃった。でも、たぶん、俺がことばをてばなしたまんま、まだそれをとりもどせていなかった、そんないつかのよるだった。
新月のよるだったのかもしれないし、たまたま月のみえないむきだったのかもしれない。ともかく、そのよるはシャイロックのいえのまどから月がみえなかった。それだけはたしかだった。
俺はちぎれたカーテンのすきまから西のそらをみていた。あおい星がぱちぱちとまたたいて、俺のひとみとおどるのをみていた。こうこうともえる星。いつかだれかのなまえをつけた星。わけもなくうれしくて、ベッドのうえでくるくるまわった。こんばんは、あたらしいともだち。ようこそ、ふるいともだち。俺はうなりごえをあげてあいさつをした。俺が「ともだち」ということばをとりもどすまえから、星たちはともだちだった。
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