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    WT68116570

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    ぞうさん(@TA2uyfH5yjaTUY9)のフード鋼くんに滾って書いた短文。フードに隠れてキスする荒村。
    こちらの素敵絵を参考にさせていただきました。https://twitter.com/TA2uyfH5yjaTUY9/status/1461352919400288268?t=nsd-aS7bO2IHb6-h8SR5fA&s=19

    荒船は急いでいた。恋人との待ち合わせにはいつも30分前には集合場所に着くようにしているのに、走りながら横目に見た時計の長針は、既に集合時間の5分前を指している
    (クソっ!なんなんだ今日は………!厄日か!?)
    家を出た時は時間に余裕がありすぎる程だったというのに、通り道で小学生がボールを追って車道に飛び出そうとするのを止めて叱り、足の悪さで横断歩道を進めない老人の為に介添えをし、自転車で歩行者にぶつかった青年がそのまま逃げようとするのを捕まえていたら、いつの間にか時間が溶けていたのだ
    『悪ぃ、鋼。少し遅れる』
    走りながらスマホを操作して連絡を入れれば、すぐに既読がついて返信が届く
    『大丈夫だ、待ってる』
    気をつけて、といううさぎが心配そうな顔をしているスタンプが続けて届き、胸の内が温かくなった
    (早く行ってやらねぇと………って、クソ!雪まで降ってきやがった)
    朝気象予報士が言っていたことを思い出す。今年初の雪が降るかもしれません、防寒できる格好でお出かけするといいでしょう。そんな風に言っていた筈だ
    (見えた!)
    公園の入口にある車止めに手をついてひょいと飛び越え、中にある時計塔の真下を見れば、待ち人の姿がある。雪が降ってきたからだろうか。フードを被っているせいで、荒船が近づいてくることにまだ気づいていない
    「鋼!」
    スマホを見ていた村上の顔が上がる
    「荒船」
    ふにゃりと、恋人になってから見せてくれるようになった笑顔が荒船を出迎えた
    「わり、はっ…はっ……遅くな、った」
    「そんな急がなくてよかったのに」
    村上が荒船の額をそっと撫でる。汗で貼りついた前髪が目に入らないように避けられ、視界が広がる
    「寒かったよな。赤くなってる」
    フードの中の頬や鼻の頭が赤い。どうやら集合時間よりかなり早く来ていたようだ
    「いや、そんなことないぞ」
    そこで荒船は気づく。なんとなく、だが村上の声が上ずっていることに
    「………?なんかいい事でもあったのか?」
    「え?あ、うん………まぁ」
    すい、と視線を外してはっきり言わない村上に、少しムッとする
    (なんだよ。俺に隠し事とかいい度胸じゃねーか)
    一瞬落ちた視線が手の中のスマホに向いたのを見て、荒船は目を光らせる
    「原因はこれか?」
    「あっ!?」
    村上の手ごとスマホを掴んで画面を覗き込めば、そこにはボーダーの18歳組で作っているグループトーク画面があった。………そして、そこに並んでいるのは紛れもなく荒船自身の写真
    「なんだこれ………あぁ!?」
    その写真たちはどれも隠し撮りしたような構図で。よくよく見れば、ここに来るまでにしたアレコレが映っていた
    「っふ、ふふっ………!」
    くすくすと笑う村上に、どういうことかと顔を向ければ、赤くなった顔で愛おしげに見つめてくる
    「ごめんな。荒船が遅れた理由、知ってたんだ。たまたま居合わせたらしい穂刈とかカゲとかが写真送ってくれてさ」
    トーク画面には、写真の合間にコメントも送られていた
    『どうかお礼を、って相手が引き止めてたが、断ってたぞ。「恋人を待たせてるから」だと。よかったな、鋼』
    独特の言い回しで告げ口する同隊の隊員に、後でシメると心に誓う
    「ここに来るまでにたくさん人助けしたんだな。やっぱりオレの師匠は格好いい」
    キラキラ、そう表現するのが相応しい目で、村上が見つめてくるから。荒船の手は自然と動いていた
    「………荒船?」
    寒さで冷たくなった頬を撫で、そして唐突にフードの端を掴む。そのまま引き寄せ、フードの中というパーソナルスペースに踏み込んだ
    ちゅっ
    周り全てから村上の顔をフードで隠して、愛しい唇に口づける
    ………世界一かわいいと思う恋人の照れ顔を、他人に見せびらかす気は全くなかった
    「………………っ、っ!??」
    何をされたか理解するまでに時間がかかったようで、少し間が空いてから村上の顔が真っ赤に染まった
    「あ、ああ荒船っ!?」
    「なんだよ」
    「こ、ここ外っ………!!誰かに見られたらっ………!!」
    「したくなったんだからしょうがねーだろ」
    ほら、早く行くぞ。そう言って村上の手を取る。羞恥で熱くなったのか、思ったよりは指先は冷えきっていなかった
    「………荒船、もしかして照れてるか?」
    何も言わずにズンズン進む荒船に、村上は顔を覗き込んだ。今日は表情を隠す帽子がないからよく分かる。じわじわ荒船の頬が染まっていた
    「あー、修行が足りねぇ」
    「何の?」
    「己の欲望に耐える修行」
    バツの悪そうな声で呟く荒船に、村上は少し目を見開き、
    「………オレは、別に耐えなくてもいいと思うぞ」
    そんな爆弾発言をかましてきた。柔くにぎにぎと手を握り返される
    「お、まえ………いい加減にしろよ」
    俺の欲望ナメんな。こちとら多感な18歳なんだ。そんなことを考えているのを知ってか知らずか、荒船の好きな顔で微笑むものだから、荒船はもう一度そのかわいい唇を奪ってやった
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