共同作業 玄関の引き戸はおそろしく立て付けが悪く、開け閉めのたびに絵に描いたようながたがたという音を立てる。おまけに、開閉にはちょっとしたコツが必要だった。いわく、ななめに押し上げるようにして力をかけるとスムーズに開くだとか、引き開ける瞬間の勢いが肝心だとか。主張はみな違っていて、獣人寮の住人はそれぞれが自分なりのやり方を持っていた。
今にも羽根が外れて飛んでいってしまうのではないかと心配になるほど旧式の扇風機は、それでも日々黙々と首を振っている。開け放った窓から控えめな風が入ってくるのを、半透明の扇風機の羽根がゆるくかき回す。二階の自室にいるよりも一階の談話室にいた方が涼しい気がして、サモナーは何をするでもなく床に転がっていた。ソファがあるのに腰を下ろさないのは、ソファの布地が肌に張り付くのを嫌ったからだ。
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