居心地の悪い席「ノイマン大尉、俺はいつまでここに座ってれば良いんですかね?」
「ラミアス艦長が帰って来るまでではないですか?チャンドラ“艦長代理”」
チャンドラは今、アークエンジェルの艦長代理を務めている。座っているのは艦長席だ。
本来の艦長であるラミアスはフラガ大佐と共に世界平和監視機構コンパスの設立記念パーティーに行ってしまった。
チャンドラは政治のことは門外漢だが、このパーティーが必要な事ぐらいはわかる。
そしてアークエンジェルに人員を残していかないといけない事もわかる。しかし、だ。
「俺もパーティーの方が良かったなぁ」
「そうなのですか、チャンドラ“艦長代理”」
「というか、艦長代理が嫌だ」
「そうなのですね、チャンドラ“艦長代理”」
「やめてもらえますかね、その“艦長代理”ってあからさまに強調して言うの!あと敬語も!」
ノイマンは完全に楽しんでいる。
恨みを込めて睨んでやれば「悪かったよ」と答え続けた。
「特に緊迫した情勢ではないし、なかなか座れる場所でもない。景色でも楽しんどけば良いじゃないか」
「楽しんどけと言われてもねぇ」
パーティーはオーブで開催されているのでブリッジから見えるのは見渡す限りの青い海である。
良い景色ではあるのだが海は見飽きたと言うのが正直なところだ。
景色を楽しめば良いなんて言っているノイマン自身も視線は持ち込んだ本に向いている。
チャンドラも電子端末でも持ち込んで作業でもと思っていたのだがこの席は落ち着かない。
「ノイマン、席変わってくれないか?」
「お前、操舵出来たっけ?」
「出来ないけどぉ、そこを何とか!」
「諦めろ」
そう言ってノイマンは本格的に本を読み始めてしまった。ブリッジには2人しかおらず口調は完全にプライベートのものになってしまっている。
ここまでリラックスした雰囲気なのだ、気を張らず悠々と過ごせば良いのだが。
とりあえず外を見てみれば、やはり見渡す限りの青い海。
(艦長たち本当に早く帰ってこないかなぁ)
居心地の悪いこの席で見る海は、本日快晴のためとても輝いていた。