「ノイマン、お前、本当に幽霊じゃないな?」
「何言ってんだ、足もあるだろう」
「いや、こんなにお前に会えなかった事なんてなかったからさ。本当は死んじゃったんじゃ無いかと思って」
そう言いながらチャンドラは自分の目頭が熱くなってきている事を感じた。
「…おい、泣くなよ」
ノイマンが困った様な、しかし優しい声音で言う
「…だってさぁ、お前とはずっと一緒に艦に乗って死ぬ時まで一緒だと思ってたからさぁ…」
ノイマンが操舵したミレニアムは一歩間違えれば乗員もろとも消し飛んでしまう様な戦場を突っ切ったのだ。ノイマンが死ぬのに俺が死なないなんてそんな事は起きないと思っていたのに、それが起き得る戦場だった。
作戦が開始された時チャンドラはノイマンと別々に行動する事に特に何も思わなかった。
上官命令であったし、チャンドラ自身も納得してキャバリアーに乗ったのだ。
しかし、作戦終了後、チャンドラがそのままオーブに帰還したのに対し、ノイマンはミレニアムに乗艦していたため一度プラントに向かう事になったのだ。
そこで結局ノイマンは一か月ほど足止めをされてしまった。
始めのうちはなんでもなかった。キリシマやユリーと共にアークエンジェルが沈んでしまった事に対しての報告書を仕上げたり、あの時目撃した事の聞き取り調査などに協力したりして結構忙しくしていたので。
しかしながら時間が経つにつれノイマンの不在がチャンドラの中で重大な事態になっていった。
自分がここで生きているのに隣にノイマンがいない。それがなんともしっくり来ない。
連絡も取れていたし、なんなら通話もした。
ただ、実際には会っていないのでノイマンが本当に生きている実感がなかったのだ。
「そんなに幽霊かどうか心配なら心臓の音でもきくか?」
「…聞くぅ」
チャンドラがそう答えるとノイマンはチャンドラの後頭部に手を回しそのまま自分の胸に引き寄せた。
「生きてる」
ドクドクとノイマンの心臓の音が聞こえる。触れた体も温かい。
チャンドラはいよいよ本格的に泣いてしまいそうだったのでそのままノイマンの胸に額を押し付けた。ノイマンは黙って胸を貸してくれたし、チャンドラの背中を慰める様に叩いてくれた。
「取り敢えず俺は帰ってきたんだが、何か言う事忘れてないか?」
「…おかえり、ノイマン」
「ああ、ただいま、チャンドラ」