霰降る煙の塔で(冒頭)人々は天に届く塔を作ろうとしました。
それに怒った神様は人々が使う言葉をバラバラにしました。
互いに言葉が通じなくなった人々は塔を作るのを諦めました。
しがみついて目を閉じていた出久は顔を上げた。屋根から響いていた打ち付けるような音が聞こえない。
手を放しつつ出久は戸の無い出入口に駆け寄った。視界に広がるのは砂色の濃霧と廃屋のわずかな影。そして一面に転がるお目当て。
「かっちゃん、霰が止んだよ」
「ンなこと言われんでも分かる」
幼馴染の不機嫌そうな声に出久は思わず苦笑する。彼はこの霧の中では普段よりも五感が鋭さを増す。だからこそ、その負担をも軽減する為に自分がいる。降り止むまでしがみついていたのはそれ故だ。期待に応えられている。その喜びが心地良い。
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